研究課題/領域番号 |
23656586
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
笹 公和 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (20312796)
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研究分担者 |
末木 啓介 筑波大学, 数理物質系, 准教授 (90187609)
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | カルシウム41 / 加速器質量分析法 / 放射性核種 / 原子力計測 / 年代測定 |
研究概要 |
通常の分析手法ではその検出さえも困難な長寿命放射性核種カルシウム41 (41Ca:半減期10.3万年)について、大型タンデム加速器を用いた高エネルギー加速器質量分析(Accelerator Mass Spectrometry: AMS)による超高感度検出法の開発を試みる。41Caは原子力関連施設などからの放射性廃棄物におけるクリアランス評価対象核種であるが、検出が困難なことから未だその評価手法は確立されていない。また、41Caは炭素14(14C:半減期5,730年)年代測定法を補う、新たな年代測定指標となる可能性を有している。 本年度はCaF2とCaH2から生成される負イオンに着目し、パイロットビームの探索とAMSの試験測定を行った。市販のCaF2とCaH2の試薬にパイロットビームとして用いるいくつかの化合物を重量比1:1で混ぜ合わせ、負イオン源に装填した。CaF2とZnOを混ぜ合わせた試料からは14 nAの40Ca19F3-と23 nAの66Zn16O2-(41Ca19F3のパイロットビーム)、CaH2とMgOとTiH2を混ぜ合わせた試料からは4 nAの40CaH-と2 nAの26Mg16O-(41CaHのパイロットビーム)を引き出せた。粒子検出器に関しては、41Ca用ガス検出器の開発を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
長寿命放射性核種カルシウム41の加速器質量分析の為に標準試料の準備を行った。また、試験測定用の試料について、各種の化合物を用いてイオン加速試験を実施した。イオン源からの負イオン生成では、CaH-の加速が実施できた。また、CaF3-イオンの利用も見込めることがわかった。試料化学処理法の開発研究では、CaF2とCaH2の2種類の試料作成の可能性を見出すことが出来た。また、設計を行った41Ca用ガス検出器では、イソブタンガス中の41Caと41Kのエネルギー損失差の計算結果より、41Caを高感度で検出できる目処がついた。
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今後の研究の推進方策 |
今後、大型タンデム加速器を用いた高エネルギー加速により、41Caの検出を試みる。加速器については、筑波大学タンデム加速器が震災により損壊した為、東京大学タンデム加速器を使用する予定である。その為、本年度実施予定だった加速器を用いた実験は、次年度に繰り越しとなった。筑波大学タンデム加速器は更新を予定しており、2014年に稼働を開始する。41CaのAMS最終試験測定は筑波大学の新タンデム加速器で実施予定である。現在、41Ca検出の為に多段電極型のガス検出器の設計・開発を進めている。最終年度に、41CaのAMS測定による高感度検出法を実現する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は加速器が震災の影響で使用出来なかった為に、イオン源によるビーム生成試験を主に実施した。その為、加速器実験関係の経費については、翌年度以降に繰り越して使用する予定である。翌年度は東京大学のタンデム加速器を用いた試験測定を予定しており、その実施経費として翌年度以降に請求する研究費と合わせて使用する予定である。 本研究では、粒子識別系で如何に妨害となる41Kを分離識別するかが重要となる。41Ca分析の為の試料処理方法を確立する。コンクリートや天然のCaCO3試料からCaF2を作成する。最終的に天然試料から試料測定用のCaF2を作成する手法を確立する。また併せて試料処理過程で、測定の妨害となる41Kの除去方法を開発する。その為、試料化学処理法の開発経費を主に計上している。その他、41Ca検出の為の多段電極型のガス検出器の開発経費を含めている。41Ca 年代測定用の地球科学試料について、サンプリング調査を実施する。このサンプリング調査と研究打ち合わせの為の旅費を計上している。また、41CaのAMS試験測定を東京大学タンデム加速器で試みる。東京大学での実験実施及び参加に関する経費も、研究費に含めている。
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