研究課題/領域番号 |
23656591
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
城丸 春夫 首都大学東京, 理工学研究科, 教授 (70196632)
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研究分担者 |
間嶋 拓也 京都大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (50515038)
若林 知成 近畿大学, 理工学部, 准教授 (30273428)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 炭素クラスター / ポリイン / 高エネルギーイオンビーム / 高密度励起 / non-IPRフラーレン |
研究概要 |
本研究の目的は、MeVイオンビーム照射による高密度励起で誘起される反応と、レーザー照射による反応を比較することにより、ポリインやnon-IPRフラーレンの生成過程に関する知見を得ることである。本研究に先立つ22年度の京大バンデグラフ加速器のビームタイムで、Heガス雰囲気中の種々の有機分子液体に対するH+ビーム照射の予備実験を行っていたが、ポリインの生成は確認されず、溶存ガスによる反応の影響が指摘されていた。23年度のビームタイムではこの効果を明らかにするために、溶媒を適切な寒剤で冷却することにより蒸気圧を十分に下げ、真空排気を行いながらH+ビーム照射実験を行なった。照射試料の紫外可視吸収スペクトルおよび高速液体クロマトグラフィー(HPLC)による分析の結果、ポリインが生成していないことを確認した。イオン照射では、レーザー照射実験と比較して励起種の密度が低いと考えられるため、今回の結果は、ポリインの生成条件として、励起種密度にしきい値があることを示唆している。一方、フラーレン溶液へのイオンビーム照射では、褐色の沈殿が生成するなど、レーザー照射と類似の反応が誘起されることがわかった。また、ポリイン溶液を試料としてイオン照射を行うと、ポリイン骨格を持つ誘導体が多種生成することがHPLCによる分析で示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
23年度に種々の炭化水素分子(ヘキサン、ノナン、デカン、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン)に対するH+ビーム照射実験を行なった結果、溶存酸素等不純物の有無にかかわらず、ポリインが生成しない(検出限界以下である)ことが確認された。溶媒への直接照射によってポリインが得られていないことは残念であるが、これは実験により初めて得られる知見である。今後はHe+ビームの利用やグラファイトターゲットへの照射など、残っている研究課題を遂行することにより、ポリイン生成過程への知見を得る予定である。またC70溶液に対するH+ビーム照射では、fsレーザーの結果と同様、溶液の脱色を観測したが、これは当初の期待通りの結果である。また、当初の計画には含まれていなかったポリイン溶液への照射実験では、ポリイン骨格を持つ誘導体の生成等、興味深い結果を得ている。さらに、イオン照射実験と比較されるレーザー照射実験では、液体アルゴン中のグラファイトのレーザーアブレーションでポリインの生成を確認するなどの成果を得ている。以上のことから、研究はおおむね順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
グラファイトが分散した溶液試料にパルスレーザーを照射すると、効率良くポリインが生成することが知られている。レーザーの場合と異なり、イオンビームは溶媒中に深く侵入することはできないが、平均粒径2μmのグラファイトパウダーを2mg/cc の濃度で分散させると、数秒に一回はグラファイトが相互作用領域に現れるため、ポリインが生成する可能性がある。23年度のバンデグラフ加速器ビームタイムでは、グラファイト微粒子分散溶液への照射実験も計画していたが、微粒子の前処理(焼き出し)が十分でなく、試料の突沸により実行を断念した。24年度の実験では、前処理を施した炭素微粒子を使用し、分散溶液への照射実験を行う。比較的広い領域を励起できるH+ビームを用いた照射実験を行い、生成物を分析する。一方、有機溶媒を標的とする実験では、より局所的に標的を励起することができるHe+ビームを使用する。実験を2回に分けて行う計画でビームタイムを申請した。1回目:グラファイト、フラーレン分散試料に対するH+ビーム照射実験(5日間)高濃度に炭素微粒子が分散した低温液体試料を撹拌し、真空中でイオンを照射する。照射試料は室温でろ過し、HPLCで分析する。2回目:種々溶媒およびフラーレン溶液へのHe+ビーム照射実験(多種試料への照射:5日間)照射試料をHPLCで分析するとともに、沈殿のレーザーアブレーション質量分析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度の実験では、京大の高エネルギーイオンビーム施設に2回のバンデグラフ加速器ビームタイムを申請しており、申請通りに認められる可能性が高い。首都大メンバーが京都に1週間滞在して実験を行うために、相当額の旅費を使用する。旅費は研究成果の発表のためにも使用する。グラファイト分散試料にビームを照射するため、新しい照射セルを製作する。また真空ラインに必要な部品を購入する。物品費では、試料としての溶媒や冷媒に使用するドライアイス、メタノール等の購入も行う。
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