太陽光発電の大量導入を図るには、半導体級Siに頼る現在のシリコン供給体制から脱却し、安価な太陽電池級Si製造プロセスを確立する必要がある。本研究は、大量に存在する珪砂を高純度化したシリカを出発点とし、これを炭素で直接還元して太陽電池級Siを得る製造プロセスの考察と開発を行った。本研究の目的は、このプロセスの素反応の熱力学平衡状態の考察と実験を行い、プロセスおよび還元炉の構造設計に必要な知見を得ることである。 熱力学データベースMALT による平衡計算では、反応温度を横軸に、一酸化ケイ素と一酸化炭素の比を縦軸にした相図を作成して、各素反応について優先的に起こるかどうかについて詳細に調べた。その結果現実的な反応条件では、SiCの生成領域とSiの生成領域が重なってしまうことを見出した。このために、シリコンの生成には必ず炭素が残っていない環境を作る必要があることがわかった。そこで、実験的にも合致していることを確認した。このため、反応プロセスの設計には、炭素消費量と残留炭素の量を正確に把握する必要がある。また還元実験中に発生するSiOガスのロスが収率に対して大きく影響を与えることがわかり、一酸化炭素ガスの排出経路を確保しつつも、極力密閉されるようにルツボ構造をとる必要があることがわかった。実際に高純度に精製されたSiO2と炭素、そしてその副生成物を使ってシリコンが得られることを確認した。
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