本研究では、これまでの独自の研究成果として、原子状水素(水素ラジカル)を利用したシリコンナノワイヤーの簡便な形成法を発見できたこと(米国特許取得済み)から、この方法を利用して、シリコンナノワイヤーの構造制御および特性の評価を進め、高効率太陽電池への応用の可能性を実証することを目的としている。 p型シリコン(Si)基板上に、スズ(Sn)を触媒体として、原子状水素を利用した気相-液相-液相(VLS)成長法によりn型シリコンナノワイヤーの形成を行い、スクリーン印刷法により銀(Ag)電極を形成し太陽電池の作製を行った。n型シリコンナノワイヤーの形成には、原料ガス(SiH_4)とドーピングガス(PH_3)を用いた。シリコンナノワイヤーの作製条件によって太陽電池特性がどのように変化するかについて調べるため、成長時間、ドーピングガス流量、温度を変化させて太陽電池を作製し、その特性を評価した。これまで調べられてこなかった400℃よりも高い温度においてシリコンナノワイヤーを作製し、その特性を調べた結果、400℃よりも高い温度では、シリコンナノワイヤーの成長が著しく遅くなり、太陽電池特性においても高温になるほど特性が悪くなることがわかった。シリコンナノワイヤー中のP拡散の挙動を調べた結果、熱処理によってシリコンナノワイヤー表面のアモルファスSi層から核の結晶Si層に拡散し、基板との間でpn接合を形成することが確認された。成長時間およびドーピング量の最適化を行って、400℃でシリコンナノワイヤーを形成後、太陽電池を作製した結果、ホスフィン流量を40sccm、作製時間を3分としてシリコンナノワイヤーを作製すると、表面反射率が広い波長域において5%程度まで低減でき、優れた光閉じ込め効果を確認した。これにより短絡電流J_<SC>が大きく増加し、セル変換効率としてこれまでの最高値12.1%を達成した。今後、太陽電池構造の改良とさらなる特性改善を進める予定である。
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