研究概要 |
ランタンによる部分置換によって塩基性水溶液中でのハイドロガーネット相(A3Fe2(OH)12(A=Ca, Sr))の生成を抑えることで安定化したA0.5La0.5FeOz(A=Ca,Sr)における電気化学的特性を調べた.特に詳細に調べたCa0.5La0.5FeOzについての結果は次の通りである.固相法での合成直後は酸素組成z=2.863であったが,一定電流での酸化過程ではz=3となる前に酸素ガスの発生により一定電位(約0.5V(vs. Hg/HgO))となった.還元過程では,0 V付近で電位が徐々に低下し,z=2.75付近で急激に低下した.その後-0.8 V付近で再び緩やかに低下し,最終的には水素発生を伴いながら約1.1 Vで一定値となった.XRDおよびメスバウアー分光測定から,出発物質のCa0.5La0.5FeO2.863は,zが2.75まで減少する過程ではFe4+イオンからイオン半径の大きなFe3+への還元に起因して単位胞体積が増大した.このとき,鉄イオンはいずれも高スピン状態であった.全ての鉄イオンが3価となるz=2.75以下まで還元しても(酸素を引き抜いても)単位胞体積の変化はほぼ一定のままであった.これは,高スピン状態のFe3+イオン (イオン半径: 79 pm)から還元で生じたFe2+イオンが低スピン状態(イオン半径=75 pm)であるために平均イオン半径が増大しなかったためであることがわかった.(ここで見られたスピン状態の変化は興味深い現象である.Sr0.5La0.5FeOz(合成直後のz=2.763)もほぼ類似の電気化学的挙動を示したが,同様なスピン状態変化の有無は明らかになっていない.)こうした電気化学的酸素量変化は空気電池の正極触媒として期待でき,しかも本材料はランタン含有量を減らすことで安価な鉄系材料として期待できると考えられる.
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