研究課題/領域番号 |
23656605
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
新川 和夫 九州大学, 応用力学研究所, 教授 (00151150)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | 再生可能エネルギー |
研究概要 |
本研究では,現在未利用である上空・高度域の風力エネルギーを取得するための技術開発を進めている.平成23年度は,(1)インフレータブルカイトの運動メカニズムを調べるため,カイトラインに発生する荷重を計測した.またカイトラインに発生する繰返し荷重を利用した発電装置を試作した.(2)飛行船と風レンズ風車を利用した実験では,飛行船で風車を浮上させた際の安定性を調べた.さらに風車で取得した風力を高分子繊維ロープの捩り変形に変え,そのエネルギーを地上まで伝達できることを示した.(3)気球に風受けを取り付け,回転できるようにした.気球の回転が高分子繊維ロープを捩り,その変形エネルギーを地上まで伝達できることを実証した.(4)高分子繊維ロープと高分子積層膜材の強度評価を行うための計測装置を試作し,実験を開始した.上記(1)~(3)の計測により,3方法の性能を比較検討することが可能となった.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度は,下記の4種類の研究を進め,当初の計画目標を達成することができた.(1)インフレータブルカイトによるエネルギー取得法:本実験では,カイトサイズ7平方メートル,ライン長さ30mを使用し,荷重の時間変化を計測した.コントロールバーを上下させ,カイトの迎え角を変化させた.平均風速約5m/sのとき,荷重が約50~400Nの範囲で変動することを確認した.カイトラインの張力を利用するため,オートリールの回転軸に発電機を直結した装置を試作した.そして,繰り返し荷重を加えることにより,発電することを示した.(2)飛行船と風車によるエネルギー取得法:本実験では,試作したロータ直径60cm,重量2.3kgfの小型風車を使用した.この風車を浮上させるため,充填ガス容量10立方メートルの飛行船を利用した.飛行船は尾翼により,風車は集風体により,風向変化に追随することを確認した.また風車で取得した風力を長さ30mの高分子繊維ロープの捩り変形に変え,その回転力を地上へ伝達できることを実証した. (3)回転気球によるエネルギー取得法:本実験では,直径2.3mの気球を使用し,気球の円周に風力エネルギーを取得するための風受けを取り付けた.そして,気球が回転することのより,長さ30mの高分子繊維ロープを捩り,そのエネルギーを地上に伝達できることを確認した.(4)材料の強度評価計測:高分子繊維ロープと高分子積層膜材の引張試験を行うための負荷装置を試作した.そして材料の強度評価計測を行った.
|
今後の研究の推進方策 |
今後は,インフレータブルカイト,飛行船と小型風レンズ風車,回転気球から得られた実験データに基づき,3方法の性能を比較検討する.そして,上空・高度域の風力エネルギーの取得・伝達・変換するための最適な方法を選定する.選定基準としては,発電効率のみでなく,安全性なども含め総合的な面を考慮する.さらに高分子繊維ロープと高分子積層膜材の強度評価を継続して行う.
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度に計画した実験が当初の予定回数より早めに達成できたため,100,126円の残金が生じたが,これは平成24年度に繰越して請求することとした.したがって,当初助成金900千円と繰越金の合計により,平成24年度の研究費は1,000,126円となる.その使用計画は下記の通りである.(1)小型風レンズ風車の軽量化のための実験材料・部品費として180千円を計画.(2)回転気球のための実験材料・部品費および掲揚料として350千円を計画.(3)研究調査および成果発表のための旅費として350千円を計画.(4)実験補助のための人件費・謝金として約120千円を計画.
|