研究課題/領域番号 |
23656607
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上田 岳彦 鹿児島大学, 理工学研究科, 准教授 (80293893)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | スクリーニング / 燃料ガス / 微生物 / プレーティング / マイクロ流路 / マイクロ培養器 / プロファイリング / 育種 |
研究概要 |
マイクロ培養器外部へのNi無電解プレーティングを行い、金属薄膜の形成と紫外線による外部微生物の殺菌を効率よく行う装置を試作しました。この装置は、マイクロ培養器が浮上するときに通過する経路を、紫外線を透過するポリジメチルシロキサン材料で構成し、浮上実験を紫外線照射下で行うことで、浮上と同時に紫外線殺菌する装置です。試験管状の容器を傾け、中にマイクロ培養器を入れ、浮上が起こると管内壁に沿って上昇し、その途中をマイクロ流路になるような挿入部を構成しました。すなわち、容器の内壁と密着することで、円筒形の材料の表面に施された100マイクロメートル幅の溝がマイクロ流路を形成し、マイクロ培養器が浮上する過程で自動的に流路に集まるような入口の形状をデザインしました。この流路構造を8回回転対称な配置に設け、紫外線ランプで照射することで培養器外部全面の殺菌を実現しながら、さらに流路出口でマイクロ培養器を回収しやすいように、マイクロピペットの先端にフィットする構造を採用しました。これにより、手作業で紫外線滅菌を試みた場合に比べて半自動的に殺菌操作を行うことができるようになり、しかも容器を回転させて、回収するためのマイクロ流路を切り替えることで、浮上時間の早いものから遅いものへと連続的に分別することができるようになりました。この分別により、ガスの産生が活発な微生物を内包したマイクロ培養器を、それ以外のものから分離して回収できること、また浮上時間の分布から、試料に含まれる微生物系のガス産生能力ブンプを決定することができるようになりました。一方、金属薄膜の厚さをより薄くすることで、紫外線の遮蔽効果を維持したまま、マイクロ培養器の見かけの比重を下げ、浮力による浮上が起きるための最小気泡サイズの条件を緩和する最適化を行いました。無電解プレーティングの厚さは還元剤濃度と処理時間で制御できました。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第1年度の目標とした、培養器を金属薄膜でコーティングして、外部だけを紫外線照射することにより殺菌するための装置の試作を達成し、それを用いてガス産生微生物だけの単離、微生物群のプロファイリング、能力の高い微生物の分離などが可能となりました。この結果を第2年度へ継承することで、残る計画に着手しやすくなりました。
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今後の研究の推進方策 |
まず、培養器が浮上して到達する液面にパーティションを設置し、微小に構成したC-Pt/電極により、微生物の水素産生を検出して個別に回収します。次に、一般環境試料からの水素産生微生物の単離・同定 鹿児島県周辺の火山性土壌、温泉水、貧栄養土壌からの試料から水素産生微生物の単離を試み、rRNA配列解析により同定を試みます。
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次年度の研究費の使用計画 |
液面パーティションは浮上したマイクロ培養器を個別に捕獲するために設置します。素材として、化学的に不活性なPDMS材料によりマイクロモールド法により作成します。100μm程度のパターンを形成するために必要な機器は全て現有しており、またマイクロリアクタ開発の経験から必要な精度を持つ液面パーティションを設計・製造する技術を現有しています。このような装置の試作に必要な試薬・材料類、装置の機能評価のための微生物細胞、および細胞培養用器具、その他ガラス器具棟の消耗品費を要します。平成23年度に未使用金が発生した理由は、主に研究旅費が航空機等の割引料金の適用などで当初計画の額より少なくなったことによるものであり、次年度使用予定の旅費の変動分として未使用金を使用する計画です。
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