研究課題/領域番号 |
23656608
|
研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
青田 浩幸 関西大学, 化学生命工学部, 教授 (50247897)
|
キーワード | 太陽エネルギー / 人工光合成 / 分子ワイヤー / 共役系高分子 / 水素 |
研究概要 |
太陽光を利用して水から水素を発生させるには光誘起電子移動反応により電荷分離状態を達成し、次の化学反応系へ利用する必要がある。ここで最大の問題点はこの電荷分離状態から非常に起こりやすい逆電子移動反応をいかに抑制するかである。そこで今回、高度に構造制御した両親媒性飛石型共役系高分子の合成とその基本構造となる分子ワイヤーの性能評価に対して重点的に研究を遂行した。 以前の合成法は親水部と疎水部を別々に合成し、それを結合させることで、両親媒性ポリマーを合成していたが、その場合、ドナーやアクセプターの位置がランダムになり、第二ドナーや第二アクセプターへ効率の良い電子移動が起こらない可能性がある。そこで、高度に構造制御したポリマーを合成するため、連続滴下法という新しい高分子合成法を考え、これにより構造制御を試みたところ、ある程度の構造制御ができることが分かった。現在、親水部、疎水部の長さの制御の最適化を検討している。 他方、高分子ワイヤー自身の性能評価を行うため、レーザーを用いた過渡吸収法とカーシャッターを利用した蛍光寿命を測定することで、超高速の電子移動(1ps程度)が超遠距離(40nm以上)で可能であることを見出した。これはこれまでの世界記録を1ケタ以上 上回るものである。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レーザーを用いた1psの時間領域での過渡吸収や蛍光寿命の測定が行える装置の開発はほぼ完成し、いくつかの分子ワイヤーを用いた系の速度定数等のデータが得られるところまできた。他方、メインとなる両親媒性飛石型共役系ポリマーの合成において、水ー油界面に存在させるための親水部、疎水部の分子量制御の最適化に時間がかかっており、少し予定より研究が遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
水ー油界面に存在できる両親媒性飛石型共役系ポリマーを合成し、相間遠距離電子移動を行うとともに、第二ドナー、第二アクセプターに関する検討を行い、長寿命電荷分離状態の形成および共存させる白金ナノコロイドの調整を検討し、水素発生につなげていく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本研究で最も必要な費用は1試薬、2ガラス器具、3レーザーの消耗品である。全て消耗品の範疇に入るものである。また、旅費は光化学討論会参加発表分(愛媛大学)を、謝金としては論文の校正にかかる費用を見込んでいる。
|