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2011 年度 実施状況報告書

RNA編集酵素遺伝子を単離・同定するための新規スクリーニング法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 23657003
研究機関名古屋大学

研究代表者

杉田 護  名古屋大学, 遺伝子実験施設, 教授 (70154474)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワードRNA編集 / 葉緑体形質転換 / ヒメツリガネゴケ / 逆遺伝学 / ペンタトリコペプチドリピートタンパク質 / PPRタンパク質
研究概要

葉緑体とミトコンドリアでmRNAの特定のシチジン(C)がウリジン(U)に変換される「RNA編集」は植物の生育に必須な現象である。しかしRNA編集酵素の実体は未だ不明である。本研究ではモデル植物として優れた特性をもつヒメツリガネゴケを用いて、RNA編集反応の有無を簡便に検出する実験系を開発し、RNA編集に関連した未知因子の分離・同定を目指す。本年度に得られた成果は次の通りである。(1)ヒメツリガネゴケの葉緑体ではリボソームタンパク遺伝子(rps14)が転写された後でmRNAのACGコドンがC-U RNA編集によりAUGコドンに変換される。このRNA編集の生物的意義を検証するため、rps14遺伝子のACGコドンをATGに置換した改変rps14遺伝子をもつ葉緑体形質転換株を作製した。(2)ミトコンドリアで作用するRNA編集因子の候補遺伝子について、逆遺伝学手法を用いて候補遺伝子が実際にRNA編集に関与するかを解析した。その結果、ペンタトリコペプチドリピート(PPR)タンパク質をコードする2種の核遺伝子(PpPPR78とPpPPR79)がミトコンドリアの3カ所のRNA編集部位に作用することを明らかにした。(3)PPRタンパク質PpPPR43はミトコンドリアcox1遺伝子の第3イントロンのスプライシングに作用する因子であることを明らかにした。(4)PPRタンパク質と標的RNA配列の結合に関する分子認識メカニズムを明らかにした。(5)小葉類イヌカタヒバのゲノムに800種以上のPPRタンパク質がコードされていることを明らかにした。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初計画通りにRNA編集部位を変異させた葉緑体形質転換株を作製することができた。この株を用いることにより本研究課題をさらに進展させることが可能となった。ミトコンドリアのRNA編集に関与する新しいタンパク質因子を同定したことは大きな成果である。また本研究の副産物として、RNA編集だけでなくRNAスプライシングに作用する新規のPPRタンパク質を明らかにした点も評価する。

今後の研究の推進方策

(1)葉緑体形質転換レポーター株に突然変異をEMSで誘発して多数のRNA編集欠損変異体を分離する。(2)突然変異部位を次世代型シーケンサーを用いて迅速に特定する。突然変異の原因遺伝子の中にはRNA編集酵素本体だけでなく、RNA編集に関わる配列認識因子など様々な因子が含まれていることが予想される。(3)取得した候補原因遺伝子の野生型cDNAを単離しこれを突然変異株に導入し強制発現させ、葉緑体におけるRNA編集反応が回復するかどうかを確認する。(4)前年度に同定したミトコンドリアのRNA編集因子については、単独でRNA編集部位を認識するのか、あるいは別の因子と協調して認識するのかを検討する。

次年度の研究費の使用計画

多数のコケ変異株の培養と変異株の解析のための反応キット・酵素類、生化学用試薬、培養用プラスチック類、次世代シーケンス用試薬薬が必要となるので研究経費の大部分は消耗品代に充てる。多数のコケ変異株のスクリーニングと継代培養のための研究補助員人件費、成果発表のための国内旅費と英語論文の校閲および論文掲載料のための経費に使用する。

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2012 2011 その他

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] A PPR-DYW protein is required for splicing of a group II intron of cox1 pre-mRNA in Physcomitrella patens.2012

    • 著者名/発表者名
      Ichinose, M., Tasaki, E., Sugita, C. and Sugita, M.
    • 雑誌名

      The Plant Journal

      巻: 70 ページ: 271-278

    • DOI

      10.1111/j.1365-313X.2011.04869.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Identification and characterization of the RNA binding surface of the pentatricopeptide repeat protein.2012

    • 著者名/発表者名
      Kobayashi, K., Kawabata, M., Hisano, K., Kazama, T., Matsuoka, K., Sugita, M. and Nakamura, M.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Research

      巻: 40 ページ: 2712-2723

    • DOI

      10.1093/nar/gkr1084

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The PPR-DYW proteins are required for RNA editing of rps14, cox1 and nad5 transcripts in Physcomitrella patens mitochondria.2011

    • 著者名/発表者名
      Uchida, M., Ohtani, S., Ichinose, M., Sugita, C. and Sugita, M.
    • 雑誌名

      FEBS Letters

      巻: 585 ページ: 2367-2371

    • DOI

      10.1016/j.febslet.2011.06.009

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The Selaginella genome identifies genetic changes associated with the evolution of vascular plants.2011

    • 著者名/発表者名
      Banks, J.A., Nishiyama, T., Hasebe, M., Bowman, J.L., Gribskov, M., dePamphilis, C., Albert, V.A., ... Sugita, M., ....., et al. (103 authors)
    • 雑誌名

      Science

      巻: 332 ページ: 960-963

    • DOI

      10.1126/science.1203810

    • 査読あり
  • [学会発表] ミトコンドリア機能不全はコケ原糸体のクロロネマ細胞からカウロネマ細胞への分化を抑制する2012

    • 著者名/発表者名
      一瀬瑞穂, 杉田護
    • 学会等名
      第53回日本植物生理学会年会
    • 発表場所
      京都産業大学
    • 年月日
      2012年3月16日
  • [学会発表] ヒメツリガネゴケのPPR-DYWタンパク質はミトコンドリアcox1 pre-mRNAのスプライシングに働く2011

    • 著者名/発表者名
      一瀬瑞穂, 田崎瑛示,杉田千恵子, 杉田 護
    • 学会等名
      日本植物学会第75回大会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] ミトコンドリアのRNA 編集に働くPPR-DYW タンパク質の同定2011

    • 著者名/発表者名
      内田 雅人, 大谷 祥太郎,一瀬 瑞穂, 杉田 千恵子,杉田 護
    • 学会等名
      日本植物学会第75回大会
    • 発表場所
      東京大学駒場キャンパス
    • 年月日
      2011年9月17日
  • [学会発表] The moss PPR-DYW proteins are required for RNA editing and RNA splicing of mitochondrial transcripts.2011

    • 著者名/発表者名
      Mamoru Sugita, Mizuho Ichinose, Shotaro Ohtani, Masato Uchida
    • 学会等名
      International Conference for Plant Mitochondrial Biology
    • 発表場所
      Hohenroda, Germany
    • 年月日
      2011年5月15日
  • [備考]

    • URL

      http://www.gene.nagoya-u.ac.jp/~sugita-g/ronbun.html

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公開日: 2013-07-10  

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