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2011 年度 実施状況報告書

複数の神経情報を細胞内で区別・識別するための分子生理機構

研究課題

研究課題/領域番号 23657004
研究機関甲南大学

研究代表者

久原 篤  甲南大学, 理工学部, 講師 (00402412)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード線虫C. エレガンス / 情報識別 / 温度走性 / 匂い情報処理 / 分子遺伝学
研究概要

温度と匂い物質の識別に関わる分子-チャネルを介したイオン流入の強弱や時系列変化 温度と嗅覚情報の伝達に関わる共通分子として、cGMP依存性チャネルであるTAX-2とTAX-4が同定されている。興味深いことに、単離されたtax-2とtax-4変異体のうち、弱い点変異をもつものは、温度応答行動は異常であるが、嗅覚応答行動は正常であることが見つかった。このことから、チャネルを透過するイオンの濃度の強弱や、時系列での開口パターンの違いが、温度と嗅覚情報の識別に関与している可能性が考えられた。そこで、変異型チャネルをもつ変異体に、温度と嗅覚情報を与えたときの神経活動をCa2+や膜電位のイメージングで測定し、温度と嗅覚情報の識別パターンを解析することを行なった。 シナプス部位における神経情報の識別温度情報伝達と匂い情報伝達の両方に関わり、シナプス情報の識別に関わるグルタミン酸シグナリングとして、グルタミン酸開口性Cl-チャネルの神経回路上での働きを明らかにした。さらに、複数の温度受容ニューロンからの異なる温度情報が、単一の介在ニューロンAIY内において、バランスをとりせめぎ合うことで、AIYの活動を上下させ、温度に対する行動を逆転させることがみつかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

cGMP依存性チャネルであるTAX-2とTAX-4の変異体のうち、弱い点変異をもつものは、温度応答行動は異常であるが、嗅覚応答行動は正常であることが相関付けられ、このことから、チャネルを透過するイオンの濃度の強弱や、時系列での開口パターンの違いが、温度と嗅覚情報の識別に関与している可能性が考えられるに至ったため。さらに、複数の温度受容ニューロンからの異なる温度情報が、単一の介在ニューロンAIY内において、バランスをとりせめぎ合うことで、AIYの活動を上下させ、温度に対する行動を逆転させることがみつかったため。

今後の研究の推進方策

今後の研究の推進方法として、引き続き情報識別に関わる変異体の単離をおこなう。遺伝子同定後の解析としては、温度と嗅覚情報の識別に関わる遺伝子をクローニングした後は、GFPなどをつかい、遺伝子産物の発現細胞と細胞内局在を解析し、特定のニューロンで責任遺伝子を発現させ、細胞自律性を検証する。同定した遺伝子が新規の分子をコードする場合は、可溶性タンパクと膜タンパクそれぞれに特化したYeast two hybrid法つかい関連分子を同定する。機能細胞の活動を神経活動を細胞内カルシウムインジケーター等をつかい測定する。温度情報と匂い情報は、神経回路上で特定の介在ニューロンに集約しているため、その介在ニューロンにおけるシナプス部位の解析も行なう。また、温度と餌条件の情報処理に関する解析もおこなう。温度と匂い物質の情報の識別に関わる生理学的暗号の解読 温度と嗅覚の情報が、局所回路内の個々のニューロンにおいて、どのような生理学的な暗号により識別されているのかを神経活動イメージングにより調べる。具体的には、温度刺激と匂い物質を同時に与えたときの神経活動を、genetically encodable Ca2+インディケーター(Yellow cameleonなど)や膜電位インディケーター(Mermaid)で測定する。測定装置として、正立顕微鏡下で生きた線虫に温度刺激と匂い物質を同時に定量的にあたえる装置を開発する。具体的には、マイクロ加工技術を使い化学物質を還流させるプレパラート(PDMS製)を作成する。溶液とプレパラートの温度は、電圧で温度を変化させる素材(ペルチェやITO(塩化インジウムスズ))を使い制御する。現在、ITOのガラス管への蒸着を検討中である。

次年度の研究費の使用計画

初年度において光学機器や研究材料を購入し、研究を遂行できる状況となったため、本年度はより効率的に研究を遂行するためにアルバイトを雇用し研究の遂行に努める。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (6件)

  • [雑誌論文] 神経活動の光操作とイメージングによる神経伝達の暗号解読2012

    • 著者名/発表者名
      久原 篤
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 86, 6, supple ページ: 4

    • DOI

      non

  • [雑誌論文] Bidirectional regulation of thermotaxis by glutamate transmissions in Caenorhabditis elegans2011

    • 著者名/発表者名
      Ohnishi N., Kuhara, A., Nakamura, F., Okochi, Y., Mori, I.
    • 雑誌名

      The EMBO Journal

      巻: Vol. 30 ページ: 1376-1388

    • DOI

      doi:10.10380/emboj.2011.13

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neural coding of opposite seeking behaviors by stimulatory and inhibitory neurotransmission in a single sensoryneuron2011

    • 著者名/発表者名
      Kuhara, A., Ohnishi N., Shimowada T., Mori, I.
    • 雑誌名

      Genes & Genetic Systems

      巻: 86, 6 ページ: 437

    • DOI

      non

  • [雑誌論文] Novel and conserved protein TTX-8/Macoilin is required for diverse neuronal functions in C. elegans2011

    • 著者名/発表者名
      Miyara, A., Ohta, A., Okochi, Y., Tsukada, Y., Kuhara, A., Mori, I.
    • 雑誌名

      PLoS Genetics

      巻: 7(5) ページ: 1-14

    • DOI

      doi:10.1371/journal.pgen.1001384

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Neural coding in a single sensory neuron controlling opposite seeking behaviors in Caenorhabditis elegans2011

    • 著者名/発表者名
      Kuhara, A., Ohnishi N., Shimowada T., Mori, I.
    • 雑誌名

      Nature commun.

      巻: 2 : 355 ページ: 1-12

    • DOI

      doi: 10.1038/ncomms1352

    • 査読あり
  • [学会発表] 行動に関わる神経回路の生理暗号をさぐる2012

    • 著者名/発表者名
      久原 篤
    • 学会等名
      第4回 甲南大学生物学シンポジウム(招待講演)
    • 発表場所
      神戸、甲南大学
    • 年月日
      2012.1.13
  • [学会発表] Neural coding in neural circuit controlling seeking sensory-behavior2011

    • 著者名/発表者名
      久原篤、大西憲幸、下和田智康、森郁恵
    • 学会等名
      第49回日本生物物理学会年会(招待講演)
    • 発表場所
      姫路、兵庫県立大学
    • 年月日
      2011.9.16
  • [学会発表] 光技術と分子遺伝学から探るシナプス伝達の暗号2011

    • 著者名/発表者名
      久原 篤
    • 学会等名
      生理研研究会「シナプス可塑性の分子基盤」(招待講演)
    • 発表場所
      岡崎、生理学研究所
    • 年月日
      2011.6.16
  • [学会発表] Adaptation and evolution against environmental temperature-changes in C. elegans2011

    • 著者名/発表者名
      宇治澤知代、井上奈穗、前田諒、太田茜、久原篤
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.12.13
  • [学会発表] Excitatory and inhibitory neurotransmission in a single sensory neuron direct opposite temperature-seeking behaviors2011

    • 著者名/発表者名
      Atsushi Kuhara, Noriyuki Ohnishi, Tomoyasu Shimowada, and Ikue Mori
    • 学会等名
      第34回日本分子生物学会年会
    • 発表場所
      横浜、パシフィコ横浜
    • 年月日
      2011.12.13
  • [学会発表] 暑がり屋さんの脳・寒がり屋さんの脳~温度感知と脳の仕組み~2011

    • 著者名/発表者名
      久原篤
    • 学会等名
      日本動物学会 近畿支部講演会(招待講演)
    • 発表場所
      神戸、甲南大学
    • 年月日
      2011.11.5

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公開日: 2013-07-10  

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