研究概要 |
分裂酵母を用いて条件的ヘテロクロマチンの確立に関する分子機構を明らかにした。分裂酵母は、セントロメアやテロメアなどの構成的ヘテロクロマチンの研究によく用いられていたが、細胞状態によって生じたり失われる条件的ヘテロクロマチンをもつか否かは不明であった。他グループによって、ヘテロクロマチンに特異的な修飾ヒストンである9番目のリジン残基がメチル化されたヒストンH3(以下、H3K9me)の存在領域がゲノム網羅的に同定され、既に知られていた構成的ヘテロクロマチンのみならず、減数分裂関連遺伝子mei4およびssm4遺伝子座にH3K9meが存在することが示されていた。我々は、まず、mei4およびssm4におけるH3K9meが、細胞が栄養増殖をするときに存在し、減数分裂および胞子形成時には失われ、ふたたび栄養増殖を開始すると再確立することを示し、分裂酵母が条件的ヘテロクロマチンをもつことをはじめて明らかにした。次に、これらの条件的ヘテロクロマチンの確立に必要な因子の探索を行い、すでに、mei4およびssm4遺伝子mRNAの分解に必要であることが知られている蛋白質因子Mmi1とmRNA上のシス配列DSRが必要であることを示した。さらに、近年、Mmi1と相互作用をすることが報告されたRed1がH3K9メチル化を行うメチル化酵素Clr4と相互作用をすることでH3K9me生成に必要であることを見出した。以上の結果は、mRNA分解経路であるDSR-Mmi1-Red1が分裂酵母条件的ヘテロクロマチンの確立を行うことを示しており、今後、同様の分子機構が高等真核生物で機能するか否かを明らかにすることで、高等真核生物の条件的ヘテロクロマチン制御の解明に資することができる。本研究成果は、Tashiro, S. et al. Genes to Cells, 18:327 (2013)として発表された。
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