Sox2をはじめとした転写制御因子が結合するゲノム上の部位を、in vivoビオチン化転写制御因子を用いたChIP-Seq (Chromatin Immunoprecipitation- Sequencing) 解析によって明らかにすることを目指した。この方法は抗体の有無や性能などに依存せず、ビオチン化tagを付加するための発現バクターの挿入ORF (Open Reading Frame) を置き換えるだけでどのような転写制御因子にも適用可能なので、同一条件で多数の転写制御因子のゲノム結合を平行して、そして体系的に解析することができる。 この方法を駆使して、エピブラスト幹細胞ゲノムにおけるSox2とPou5f1などの転写制御因子の結合領域、その領域の大きさ、分布等を分析した上で、Sox2とPou5f1の共通の結合領域を分析した。その結果を、他のグループから発表されたES細胞、神経幹細胞におけるSox2、Pou5f1/Pou3f2の結合部位と比較したところ、次のことが明らかになった。(1) Sox2は、ES細胞では多くの場合Sox2-Pou5f1 のペアとして作用するが、エピブラスト幹細胞や神経系幹細胞では、Sox2はPou以外の多様な転写制御因子と複合体をつくり、ES細胞とは大きく異なった制御標的をもつ。(2)しかし、これらの異なった細胞種に共通したSox2-Pou結合領域も存在していて、近在遺伝子のGene Ontology解析からは、それらが初期胚発生に必須の遺伝子群を制御していることが示唆された。
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