研究課題
本年度は、給気能力が異なる水生植物として、ヨシ(換気型)とイネ(拡散型)を用いて、1) 根圏の酸素濃度変化に対する呼吸応答の測定と、2) 微小酸素電極を用いた地下部組織内部の酸素濃度分布測定法の開発を行った。1) 根圏の酸素濃度変化に対する呼吸応答 換気型のヨシと、拡散型のイネの実生を用いて、0.2 mM NH4、溶存酸素濃度20 μM O2以下の環境下で2週間水耕栽培を行った。水耕栽培終了時の個体地下部を対象に根呼吸測定を行った。酸素飽和状態の培養液で満たされたキュベットに地下部を入れ、培養液の溶存酸素濃度を連続測定することで、根圏の酸素濃度変化に対する根呼吸速度の変化を記録した。現在、得られたデータを入力し、解析を進めている状況だが、ヨシの呼吸応答に関する概要が現段階で明らかとなった。ヨシの根呼吸速度は、根圏がほぼ酸素飽和状態(250 μM O2)で1.5 μmol O2 g-1 root DW min-1を示したのに対し、低酸素状態(20 μM O2)で0.5 μmol O2 g-1 root DW min-1まで低下した。この結果から、給気能力の高い換気型の水生植物においても、地下部の呼吸による酸素消費に応じて、地下部組織内の酸素濃度は大きく変化することが示唆された。2) 微小酸素電極を用いた地下部組織内部の酸素濃度分布測定法の開発 ニードル型の微小酸素電極を地下部組織内に直接差し込み、根内酸素濃度の概況について予備的な測定を行った。しかし、根横断面に沿った酸素濃度分布の把握など詳細な測定を行うには、極めて精密な電極挿入操作が必要であることが判明した。従って、電極を上下左右にコントロール可能な高精度マニピュレータを今後早期に導入し、サンプルの測定を随時進める予定である。
2: おおむね順調に進展している
給気能力の異なる植物種として、換気型のヨシと拡散型のマコモを用いて栽培し、1) 根圏の酸素濃度変化に対する呼吸応答と2) 微小酸素電極を用いた地下部組織内部の酸素濃度分布測定法の開発を順次進めた。1)については、換気型のヨシにおいても、地下部の呼吸による酸素消費に応じて、地下部組織内の酸素濃度は大きく変化することが示唆されている。2)についても問題点をはっきりすることができた。
1) 根圏の酸素濃度変化に対する呼吸応答では、呼吸速度の測定の追加実験およびそのデータから呼吸由来のATP速度を求めることを行う予定である。呼吸ATPの消費先の速度の測定も順次行っていきたい。2) 微小酸素電極を用いた地下部組織内部の酸素濃度分布測定法の開発については、根横断面に沿った酸素濃度分布の把握など詳細な測定を行うには、極めて精密な電極挿入操作が必要であることが判明したので、マニピュレータを早期に導入し、サンプルの測定を随時進める予定である。
実験をスムーズにすすめるために、研究費の約半額を人件費として使用し、残りの金額で、マニピュレータの購入や消耗品費、旅費として使用する計画を立てている。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (1件)
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