昨年度はミヤマタネツケバナのPHYE遺伝子のN末残基を大腸菌で発現するためのベクターに組込むことに成功した。本年度は大腸菌によりPHYEタンパク質を合成することで、野生集団に見られるPHYEのアミノ酸置換がもたらす機能的な差異を測定することを目指した実験を進めた。しかし、大腸菌を用いたタンパク質の合成は条件検討が容易でないため、繰返しの試行を行ったものの、機能的な差異を十分に測定するには至らなかった。さらなる条件検討を行うことで、野生集団におけるみられるアミノ酸置換が持つ機能への影響をタンパク質レベルで解明することにつながることが期待される。 また、当初考えていた方法であり、昨年度は実験がうまく行かなかった、PHYE遺伝子の全長のクローニングについても引き続き試みた。その結果、PHYE遺伝子を植物体で強発現するためのベクターに組込むことに成功し、このプラスミドをシロイヌナズナのphyE欠損株へと形質転換する実験を現在進めている。クローニングが困難だった遺伝子を単離できたことは、本研究における大きな進展であり、今後の植物体を用いた発現解析により、野生植物におけるアミノ酸置換がもつ機能的な影響を明らかにすることが期待される。
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