研究課題/領域番号 |
23657021
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
陀安 一郎 京都大学, 生態学研究センター, 准教授 (80353449)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 放射性炭素14 / 土壌生態系 / 腐食食物網 / デトリタス |
研究概要 |
23年度は研究の開始であるので、まず光信理化学製作所製10連電気炉をセットアップし、効率的なグラファイト作成体制を確立した。 第1の研究として、生物体の14C分析によって土壌炭素の分解過程における炭素年齢(diet age)を陸域生態系に導入し、植生の二次遷移過程における植物から高次消費者に至る炭素のフラックスを時系列的な調査地設定によって明らかにした。特に、優占する捕食者の一つとして樹上性クモ類を材料とし、複数栄養段階間での炭素の転送が遷移過程でどのように変化するのかに着目した。その結果、低木層において地下部腐食連鎖系と地上部生食連鎖系がクモによる捕食を介して連結しており、樹上の捕食者にも地下部腐食連鎖系での滞留を経た有機態炭素が、土壌起源の双翅目を介して供給されていることが明らかになった。 第2の研究としては森林土壌食物網にアミノ酸同位体指標を適用し、リターの初期分解過程と腐食食者のエサの分解程度に伴う食性の違いに伴うアミノ酸窒素同位体比の推移から、分解過程におけるリターのアミノ酸窒素同位体比の推移を推測した。結果としてアミノ酸指標においてエサ資源の値を反映するとして重視されるフェニルアラニンが、分解初期において微生物の生合成により特異な値を示すことが示唆された。さらに捕食者も含めた土壌食物網の全体に栄養段階推定を試し、指標としての実用上の有用性を試した。その結果は微生物代謝や被食-捕食関係と概ね一致する結果であり、陸域腐食食物網においてもアミノ酸同位体指標が有効であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究設備のセットアップは終了し、野外調査もほぼ終了した。アミノ酸同位体比分析もほぼ終了し、14Cの分析を残すのみである。研究期間2年の研究進捗状況としては十分に達成できている。
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今後の研究の推進方策 |
平成24年度は、平成23年度に採取した試料の分析、研究のとりまとめ、および論文の執筆を中心課題として行う。研究とりまとめの過程で、関係研究者と議論を行ったり、セミナー発表などを通じて考察を深める。研究の集大成として論文執筆を行い、成果公開に積極的に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
24年度に残っている大きな研究費使用に関しては、得られた試料の前処理(グラファイト化)およびグラファイト化された試料の加速器質量分析計による分析である。これらに要する物件費および外注分析代が必要である。また、成果とりまとめにあたり関係研究者と議論する必要があり、旅費が必要となる。一部の作業には分析補助者の補助が必要である。
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