研究課題
人為的誘導系を用いて任意の遺伝子やタンパク質機能の発現を特定の時間や空間で誘導することは、それら遺伝子やタンパク質が関わる生命現象の分子基盤を解明するための非常に有効な手段となる。本研究では、ケージ化された2量体誘導化合物(Chemical Inducing Dimmer: CID)の紫外線レーザーによる局所的アンケージングという手法を利用して、単一細胞における遺伝子転写誘導、および細胞膜上の任意の領域へのタンパク質の局在・活性化を、形質転換シロイヌナズナ系において確立することを試みる。・CIDとしてビオチンとエストラジオールをつないだものを合成した。・細胞膜上タンパク質局在化系のために、ストレプトアビジンとCFPとの融合タンパク質に植物のRho-type低分子Gタンパク質であるROPの細胞膜局在化シグナルを付加したもの、エストロゲン受容体のホルモン結合ドメインとYFPとの融合タンパク質を設計し、それらをコードするDNA断片を根毛細胞で特異的に働くEXPA7プロモーターの下流に置いた遺伝子を作成し、それぞれを形質転換シロイヌナズナに導入した。・単一細胞転写誘導系のために、核移行シグナルを付加したストレプトアビジンとRFPとの融合タンパク質、エストロゲン受容体のホルモン結合ドメインにLexA およびVP16転写活性化ドメインを融合したタンパク質を設計し、それらをコードするDNA断片をカリフラワーウィルス35Sプロモーターの下流に置いた遺伝子を作成し、それぞれを形質転換シロイヌナズナに導入した。また、LexA結合配列をもつプロモーターの下流にGFPをコードするDNA断片を置いたレポーター遺伝子を作成し、形質転換シロイヌナズナに導入した。
2: おおむね順調に進展している
目的とする誘導系に必要な構成要素の作成およびそれらの形質転換植物体への導入を完了し、ケージ化されていないリガンドを用いた予備的な実験を行なっており、初年度としては十分な成果が得られた。
これまでに作成された形質転換植物を用いて、まず、ケージ化されていないリガンドによる予備実験を引き続き行なうとともに、ケージ化リガンドに対する紫外線によるアンケージングの条件の検討を行なう。その上で、形質転換植物に対してケージ化リガンドを与え、紫外線レーザー照射による局所的アンケージングの実験へと進む。
アンケージングを局所的に行なうための紫外線レーザー照射装置、ケージ化リガンドの合成に必要な試薬、形質転換植物の育成のための消耗品、および分子細胞生物学研究のために必要な試薬、キット類などの費用を計上する。また、実験に必要な光熱費を計上する。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)
The Plant Cell
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10.1105/tpc.111.083337
Plant and Cell Physiology
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http://rdb.kuicr.kyoto-u.ac.jp/researchers/view/aoyama+takashi