研究課題/領域番号 |
23657038
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
高橋 陽介 広島大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (90183855)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | キナーゼ / 基質特異性 / 信号伝達 / CDPK |
研究概要 |
プロテインキナーゼがいかにして特異的基質を識別するかの解明は信号伝達研究の重要な課題であり、キナーゼの基質特異性の計画的変更による新たな信号伝達系の創出はプロテインエンジニアリングの大きな目標である。しかし基質認識と触媒活性の区別が困難なため、キナーゼの基質特異性改変の研究は進んでいない。我々はCa2+依存性タンパク質キナーゼNtCDPK1が、N末可変領域により基質の転写因子RSGを認識することを見出した。さらにNtCDPK1のN末可変領域を他のCDPKと接続することによりRSGキナーゼの特性を付与することに成功した。CDPKでは基質認識と触媒活性が別の領域に担われており、キナーゼの特異性変更の研究のモデル系として優れている。本研究ではCDPKの基質認識の分子機構の解析、基質特異性の改変、人工的な信号経路の創出を目的とした。 これまでの解析からCa2+によるCDPKの活性化に伴いCDPKが自己リン酸化されることが明らかになった。本年度はこの自己リン酸化がCDPK活性に与える影響を調べた。CDPKと相同性の高い動物のCaMKIIは自己リン酸化されるとCa2+非依存的な活性を示すので、CDPKも自己リン酸化によりCa2+非依存的な活性を獲得するか in vitro キナーゼアッセイにより調べた。その結果、CDPKはCaMKIIと異なり自己リン酸化されていても、その活性はCa2+依存的であることが判明した。一方で in vitro プルダウンアッセイの結果から自己リン酸化されたCDPKは基質であるRSGとの結合力が低下することが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CDPKの基質認識の分子機構の解析に関しては、自己リン酸化が基質との親和性に大きな影響を与えるという新しい知見が得られ順調に進展したと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
CDPKの自己リン酸化が基質との親和性に大きな影響を与えるという新しい知見が得られたので、質量分析によりCDPKの自己リン酸化部位の同定を行う。自己リン酸化されるアミノ酸をAlaに置換した変異型CDPKを作製して基質であるRSGとの結合への影響を調べる。CDPKの自己リン酸化にどのような生理的意義があるか調べる。NtCDPK1以外のCDPKのN末可変領域が基質特異性の決定に関与しているか調べる。CDPKのN末可変領域を他のキナーゼに接続することにより人工的な信号経路の創出を試みる。
|
次年度の研究費の使用計画 |
今年度はCDPKの自己リン酸化が基質との親和性に大きな影響を与えるという新しい知見が得られたので in vitro の解析を中心に研究を実施したため繰り越しが発生した。次年度は繰り越し分を含め次のように経費を使用する予定である。物品費消耗品費 分子生物学試薬、植物栽培用培地、プラスチック器具、アイソトープなど 1,620千円旅費 研究連絡 70千円謝金 実験植物の栽培 80千円
|