本研究においては、近年急速に整備されている化合物(化学物質)ライブラリから生理活性のある薬剤をスクリーニングする新奇の 方法を確立することを目的としている。スクリーニングに用いる生物材料として原核光合成生物であるシアノバクテリアを用い、生理 作用をクロロフィル蛍光挙動としてモニターするという植物生理学的な手法を導入すし、「その化合物の多様な機能活性への影響の有 無」と「その化合物の標的候補(遺伝子)」という異なる二つの情報を、一回の操作で明らかにする新しい考え方の薬剤スクリーニン グシステムの構築を目指している。 平成25年度は、プレート上にパッチ状に生育させたシアノバクテリア細胞に数十種類の薬剤溶液を滴下し、二次元蛍光カメラにより各パッチからの蛍光を経時的に測定することにより、各種薬剤の細胞内代謝系への影響を評価した。この結果、アミノ酸では試した20種のほとんどで特徴的な蛍光挙動変化が見られた一方、有機酸の場合は試した7種でいずれも変化が認められなかった。この結果は、アミノ酸代謝経路の中間代謝産物と、クエン酸回路の中間代謝産物では、クロロフィル蛍光、すなわち光合成系に対する影響が大きく異なることを示しており、細胞内の代謝系の相互作用が、調べた時間範囲(15-30分)においては大きくないと結論できる。糖の場合はグルコースで特徴的な変化が見られ、解糖系とアミノ酸合成系の相互作用も大きくないと推定される。
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