研究課題/領域番号 |
23657044
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
吉田 聡子 独立行政法人理化学研究所, 植物免疫研究グループ, 上級研究員 (20450421)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 遺伝学 / 寄生植物 / ハマウツボ科 / コシオガマ / 変異体 / 遺伝マーカー |
研究概要 |
ストライガやオロバンキなどの寄生雑草による農業被害はアフリカや中近東を中心に年々増加している。しかし、植物寄生のメカニズムはまだほとんど解明されておらず、その根本的な防除法は確立していない。本研究の目的は、日本に自生する寄生植物コシオガマをモデル実験系として用いて、寄生植物の寄生の分子メカニズムを包括的に理解することである。特に、寄生植物の吸器形成から寄生成立に至る過程に関わる寄生植物因子の性質を、変異体を用いた遺伝学的解析により明らかにすることを目指す。また、寄生植物の分子遺伝学解析基盤を立ち上げ、今後の寄生植物研究への応用の間口を開く。本年度は、コシオガマ野生型株の種子を採取し、5回の自家受粉を終えて純化系統を作成した。この純化系統にEMS処理をおこない、約1800独立M1個体からなる変異体種子プールを得た。この変異種子プールから吸器形成および侵入に異常をきたす変異体をスクリーニングした。スクリーニングはDMBQを用いて吸器誘導におけるスクリーニングとリゾトロンを用いた宿主侵入におけるスクリーニングを2段階でおこなった。コシオガマはDMBQを含むアガー上で生育させると、根の側面から吸器を形成し、不均一な根毛の分布、また側面の膨らみが見られるようになる。この条件で、吸器を作らない変異体を選抜した。さらに、リゾトロンシステムを用いて、宿主への侵入について観察した。一次スクリーニングで得られた変異体候補株は、培養土に移し、自家受粉により種子を結実させた。現在までに吸器毛の発達の見られない変異体や、吸器を形成するが、維管束の連結が起こらない変異体などを単離している。また、コシオガマのESTシーケンスから20個のSSRマーカーを作出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までに主な変異体スクリーニングを終え、来年度には個別解析をおこなう予定である。またマーカー作出も順調に進んでいる。これらは申請書に記したとおりの進行度である。
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今後の研究の推進方策 |
二次スクリーニングを経て単離されたコシオガマ変異体に対して、詳細な表現型の観察をおこなう。まず、コシオガマ変異体が他の宿主植物に対しても同様の表現型を示すかどうかを確かめる。コシオガマはイネ、トウモロコシ、ササゲなど多様な宿主に寄生することができる。これらの宿主に対する反応を調べ、原因遺伝子の一般性を確認する。さらに、DMBQ以外にも還元型キノン類は一般的に吸器誘導活性があるため、種々のキノン・フラボノイド類を処理し、吸器誘導の活性を調べる。宿主侵入の変異体については、宿主根との接触部位における寄生根の変化を、光学切片をつくり顕微鏡下で詳細に観察する。また、SSRマーカーを用いて、コシオガマエコタイプ間での多型を検出する。現在までに8つの日本の各地域からコシオガマの種子を採取しており、それぞれ純化系統の作成中である。また、研究期間中も日本各地にて適宜コシオガマ種子採取をおこなう。さらに、掛け合わせをおこない、F1植物体が充分な結実能力を持つか、F1植物体においてヘテロな遺伝子型を確認できるかを確認する。良好な多型の検出が出来たエコタイプに関しては、F2種子を採取し、ゲノムDNAのマーカーPCRをおこなうことにより、各マーカーの連鎖を計算し、簡易な遺伝子連鎖地図の構築を目指す。
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次年度の研究費の使用計画 |
物品・消耗品費は主に植物栽培用品、プラスチック消耗品、酵素および顕微鏡観察に必要な試薬等に用いる。旅費は国内学会への参加を予定している。また、論文校閲の代金をその他の分類で申請する。
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