高等動物の胚全体を未分化細胞のみから創出したという報告はない。本研究では、ツメガエルのアニマルキャップ(AC)細胞群だけを用いて、その系の構築を目指した。 胞胚期には2つのシグナルセンターが存在し、両センターによって胚全体の誘導にほぼ十分な状態が導かれるはずである。さらに、本研究室には両センターをAC細胞から分化させる技術もある。それらのAC細胞由来の人工センター領域を組み合わせる胚操作実験を展開し、発生学の一般的手法を用いて胚全体構造の誘導の実現度合いを測定・評価していった。これまでの年度の研究において外胚葉領域をBCNE化させるツールの開発ならびにNieuwkoop化させるツールの開発を行い、非常に有効な手法を確立することができていた。それ故、平成24年度はそれらのツールを活用して、効果的に胚の全体構造が誘導できることを目指すことになった。その結果、誘導されたBCNEとNieuwkoop領域が存在する状態で培養した場合にのみ、頭部神経構造、背側中胚葉構造、を有する胚様構造が得られるという画期的なデータを得ることができた。それは、物理的刺激に応じて反応して動くことから原始的な反射弓構造も成立していることがわかった。一部の胚では眼の構造も確認された。しかし、消化管構造などは確認することができず、オタマジャクシとして泳動する前の段階で成長が止まることが判明した。 以上のことから、最終年度の目標としてた完成度の高い胚様構造の試験管内での構築については、十分とまでは言えないが、将来的にそれが実現されることを期待させる段階の成果を得られたと考えている。
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