研究課題/領域番号 |
23657049
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研究機関 | 札幌医科大学 |
研究代表者 |
幸野 貴之 札幌医科大学, 医学部, 講師 (10374563)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 細胞接着 / 場所取り |
研究概要 |
足場依存性を有する多くの接着細胞を単層培養で生育させるためには,細胞を細胞培養容器へと接着させることが必須である。浮遊状態の接着細胞は,細胞接着に必要ないくつかの細胞外マトリックスを放出することが知られている。一方,汎用されるプラスチック製培養容器の素材の多くは,疎水性のポリスチレンであるため,浮遊状態の接着細胞から培養溶液中へと放出される親水性タンパク質の多くは,細胞培養容器に対して高い親和性を持たない。したがって,多くの培養容器は,細胞接着面を化学的に親水処理している。さらに,細胞接着を促進させるため,細胞培養容器表面をポリリジン,ポリエチレンイミン,ポリアリルアミン等の塩基性高分子で被覆するほか,コラーゲンやゼラチン,またはフィブロネクチやラミニンなどの細胞外マトリックスを人為的に塗布する場合が多い。これらが細胞表面に存在する接着因子受容体と相互作用することで,細胞の伸展や増殖,分化など生育に必要な情報が伝達される。本研究では,細胞が基質へと接着する過程よりも前に現れる生理現象に着目した。例えば,単層で増殖する動物細胞を培養容器に播種すると,ほぼ均一に分散し,やがて敷石状,線維状に成長後,接触阻害により細胞の運動や増殖が停止する。この現象は,半世紀以上も前から知られている。この「均一に分散する過程」において,細胞からの未同定化合物の放出を伴う「場所取り」の過程が存在することを初めて見いだした。この「場所取り」という表現は,ある細胞が接着,伸展する領域を確保するため,何らかの因子を放出し,他の細胞を寄せ付けないようにする現象を指すものである。現在,上記因子の抽出法の確立を目指し,さらに質量分析装置を用いてこの化合物の同定を試みている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度の研究計画の命題は,「場所取り」が細胞の世界では普遍的な現象であることを証明することである。当該研究期間において,培養した細胞から目的の「場所取り」因子を抽出し,質量分析法により同定するための条件を確立した。さらに,複数の細胞において,「場所取り」行為が観察された。したがって,研究計画に沿っておおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に沿って研究を推進する。ただし,目的化合物の分析に関連する項目について,当初の研究計画に記載した,当該研究機関が所有する共通機器による解析だけでは不十分な可能性が生じた。そこで,更なる解析を実施するために,より高機能で最新の設備を有する外部研究機関による委託分析を新たに行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成23年度の研究において,個々の培養細胞から放出される「場所取り」因子の抽出法を確立することができた。ところで,本過程が当初の研究計画よりも順調に推移したため,同因子の抽出に関わる試薬や細胞培養器具の購入に必要と推測した予算に余剰が生じた。一方で,同因子を質量分析法によって解析するためには,より精製度の高い,高品質の因子を調製し,最新の高機能機器を有する研究機関による外部委託分析を行う必要が生じた。平成24年度の研究計画について,大きな変更は生じないが,上記因子の精製と外部委託分析に平成23年度予算の残額を使用する。
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