研究課題
網羅的な解析が発展し、様々な生物種でデータベースが整備されつつあるが、それら情報を位置づける組織・細胞・オルガネラレベルの網羅的な解析はほとんど進んでいない。本研究では、高圧凍結技法を取り入れた透過電子顕微鏡(TEM)により生物試料の切片を広範囲の高倍率・高解像度像を自動撮影・自動結合するシステムを構築する。そして、マルチスケール性を維持した高解像度TEM像上の細胞内構造物に位置情報を自動記録する基盤技術を開発し、組織・細胞におけるオルガネラの超微形態と分布、関連情報を閲覧可能なTEM像のマッピングシステムを構築する。最終的にはオミックス情報を含めた電顕マップを公開することを目指す。 モデル植物のシロイヌナズナの根端およびタバコ培養細胞を用いて、1. 高圧凍結超薄切片作製法の高度化、2. 高倍率広域デジタルTEM写真の自動撮影システムの構築、3. 電子地図化APIの実装・アプリケーション開発、 4. アノテーション・分布定量化、5. 免疫TEM等によるオルガネラ同定、6. Web公開、の流れで研究を進めている。 23年度は、1. の固定液と樹脂の検討を行うとともに、2. 東京大学 朽名博士らと外部PCにより、TEMのCCDカメラとX-Yステージを制御して、自動撮影するプログラムと画像自動プログラムの共同開発を開始した。3. 高倍率広域デジタル写真自動撮影システムとの間での連携インタフェースを構築した。拡大縮小等の表示テストを行いながら、全オルガネラにアノテーションを加え、ポップアップメニューや文字検索によりオルガネラの位置を表示できるように改良を加えた。
1: 当初の計画以上に進展している
モデル植物のシロイヌナズナの根端およびタバコ培養細胞を用いて、1. 高圧凍結超薄切片作製法の高度化として、高圧凍結試料作製時の固定液のメーカーと濃度について、また、樹脂の種類と混合比について検討を行い良好な条件を得た。2. 高倍率広域デジタル写真の自動撮影システムの構築として、東京大学 朽名博士ら日本女子大 永田博士らと共同で、外部PCによりTEMの電子ビーム・CCDカメラ・X-Yステージを制御して自動撮影するプログラムと、撮影した数千枚の画像を自動で結合するプログラムの開発を開始した。3. 理研植物センター 櫻井博士、理研バイオマス工学 持田博士らとともに、電子地図化APIの実装・アプリケーション開発として、高倍率広域デジタル写真自動撮影システムとの間での連携インタフェースを構築した。拡大縮小等の表示テストを行いながら、全オルガネラにアノテーションを加え、ポップアップメニューや文字検索によりオルガネラの位置を表示できるように改良を加えた。 これらの研究成果に関しては、23年度の日本植物生理学会年会(京都)において発表した。
概要で述べた1.-3.を引き続き検討し、電顕写真の質を上げてゆくとともに、シロイヌナズナ根端以外の茎頂や若葉、また、タバコ培養細胞の各ステージの試料を用いて技術検討し電子地図化する。2.に関して、自動撮影プログラムを改修し、ユーザーインターフェイスを向上させる。3-4. 細胞や組織の境界線を表示できるよう改良を加え領域情報を記録できるよう改良をるとともに、オルガネラの位置を情報と領域情報から組織や細胞におけるオルガネラの定量情報を表示できるよう改良する。さらに、東京大学 桧垣博士らと電顕像におけるオルガネラの自動認証プログラムの構築を進める。アノテーションを付けたオルガネラのポップアップメニューに、各オルガネラの遺伝子やプロテオミクス、蛍光イメージングの動画などのオミックス情報のリンクを加える。5. 免疫TEM等よるオルガネラ同定: オルガネラにアノテーションを加える際、既知のオルガネラに分類できない構造体が多数出てくる可能性がある。そこで、今までに収集したオルガネラマーカー抗体や様々な糖鎖抗体を用いて免疫電顕を行ない、免疫TEMデータと構造データを比較しながら、それらの構造体を同定する。6. Web公開 : アノテーションと加えた電顕マップを公開できるようサーバーにセットアップする。所内や所外共同研究者に公開し、フィードバックを参考に改良を進め、一般への公開を目指す。
当初計画していたダイヤモンドナイフを購入しなかったため、また、研究補助員の人件費が掛からなかったため一部費用を繰り越した。繰り越した研究費と次年度研究のうち、20~30%は本研究をサポートする研究補助員の人件費および本研究の成果報告するための学会参加費として用い、20~50%を開発した基本プログラムを改修するために企業へ外注する費用に用いる。残りは、電顕試料作製用の試薬やダイヤモンドナイフなどの消耗品に用いる。
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http://labs.psc.riken.jp/gdrg/research1.html