研究概要 |
(1)PDF発現量をchico1, fmr1で調べ、時計ニューロンの形態変化、PDF発現量と老化との関係を検討した。個体レベルの解析にはw1118をコントロールとして、chico1、Fmr1変異をそれぞれヘテロで持つ系統を使用した。chico1、Fmr1変異を持つ系統ではw1118よりも2週間以上生存期間が長くなった。chico1、Fmr1変異系統およびw1118系統のいずれも、明暗周期下での活動量は加齢に伴い低下した。しかし、活動量の低下がおこる時期が、系統により異なっていた。全暗での自由継続周期は、いずれの系統でも加齢に伴って延長し、リズム強度が減少する傾向がみられたが、これらが生ずるまでの日数はchico1で最も長かった。chico1ではPDFニューロンの脳背側部へ投射でのPDF発現量が他の系統と比較して強いことが分かった。 (2)加齢によるネットワーク変化がニューロンに帰結できるかを確認するため、pdf-gal4とUAS-cycleIR, UAS-chicoIR, UAS-fmr1IRを組み合わせ、PDFを発現する時計ニューロンでのみ、cyc, chico, fmr1の2本鎖RNAを発現させRNAiによる発現低下を誘導した。これらの多くの系統で概日リズムの加齢変化が確認されたが、cycを発現抑制した雄では加齢変化が抑制された。各遺伝子のPDF細胞特異的発現抑制の寿命への影響は、雌雄で異なっていた。chicoの発現抑制では、第1染色体が異なる雄間で寿命の長さやリズム強度に有意差が見られた。従って、各遺伝子の発現抑制の影響に性差が存在すること、予想に反してchicoやFmr1のPDF細胞特異的な発現抑制は概日リズムの加齢や寿命へ殆ど影響しないこと、また寿命やリズム強度に関連する因子が第1染色体に存在する可能性等が示唆された。
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