日本新薬山科植物資料館の協力を得て,広範囲の植物からDNAを抽出し,PCR手法でSINEの有無を確認した。シダ植物21種,裸子植物20種,基部被子植物5種,単子葉植物36種,真性双子葉植物71種の,合計153種を対象とした。その結果,新規に裸子植物1種・単子葉植物4種・真性双子葉植物6種でSINE配列を見出した。これらについてクローニングを行い,種ごとに数個の塩基配列を得,その種のコンセンサスシークエンスを作成した。また,データーベースのサーチし,いくつかの植物でSINE配列の存在を確認した。複数の配列が得られたものについて,それぞれの種でコンセンサスシークエンスを作成した。 裸子植物のマオウでもSINE配列を見出し,科はこれまでの4科から17科へと一挙に増加した。裸子植物と基部被子植物ではそれぞれ一種に留まっているが,単子葉植物では6つ,申請双子葉では9つの科に存在し,種数では合計38となった。イネ科・マメ科・ナス科では4種以上で確認され,これらの科では普遍的に存在すると考えられる。また塩基配列の比較から,Au SINEは配列末端部の特徴から二つのグループに分類できるので,それらをlong-type,short-typeと名付けた。 SINEの塩基配列から系統樹を描くと,植物自体の系統樹と同様なパターンとなり,SINEの系統樹とそれを持つ植物の系統樹に矛盾は無かった。近縁の植物で見出されるSINEがお互いに似ていることから,Au SINE配列は親から子へと垂直的に,植物の共通祖先から伝えられてきたと結論した。 SINE配列は系統関係の推定に使えるだけでなく,この配列を利用したマーカー開発も可能であり,本研究により多種多様な植物に存在することが確認されたことから,広く植物界全体を対象とした研究へと進んでゆくと考えられる。
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