本研究はイトマキヒトデ中心体分画より発見した新奇DNA配列が中心体を有する真核生物に広く保存されると予測して、真核生物における網羅的探索を試み、得られた塩基配列の比較から系統進化の新たな分子マーカーとしての可能性を探ることを目的とした。研究実施計画として以下の方法により、相同DNAを検出し塩基配列を決定し、保存される配列と塩基置換の有無から配列の保存性を明らかにして、真核生物に於ける保存性を比較、追跡することで、これまでにない新たな分子マーカーを用いた議論が展開できると考えそれを実証した。 イトマキヒトデの精子から得られたDNA配列をもとに、約500bpを増幅するように設計したプライマーを用いたPCRにより、他の動物からも約500bpのPCR産物が増幅され、増幅された塩基配列は95%以上の高い相同性を確認している。しかし、これらの配列は、現在登録されるDDBJなど、DNAデータベースには登録されていない新規の配列にもかかわらず、既にゲノム解析が完了した、ショウジョウバエやウニからも検出され、さらに種子植物のイチョウからも95%以上の相同性が検出された。 最終年度の成果として、真核生物の未解析グループであったアメーボゾアの変形菌の塩基配列を決定した。動物、植物と同様に変形菌からも高い相同配列が検出されたことから、新奇DNAは真核生物に広く保存される、他に類を見ないDNAであることから新たな分子マーカーとしての可能性が高まった。このような成果が得られたが、このDNAの新奇性は配列だけでなく中心体に局在していることが重要と考えている。その為、電子顕微鏡レベルでの解析を求められている。査読者が納得する電子顕微鏡像が得られていないので、投稿した論文がまだ受理されていないのが現状である。この問題が解決すれば、本研究で明らかになった真核生物に於ける新奇DNAの保存性を公表できる。
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