研究課題
本研究は南極に住む微生物についてその新奇な性質を明らかにすること及び、新分類群の提案を目的とした。南極露岩地域・スカルブスネスにある淡水湖・長池由来サンプルより単離された、赤色コロニーを形成し突起状の構造物を有する微生物(120-1株)の生理学的・生化学的特性について詳細な解析を行った。その結果本菌の16S rRNA遺伝子配列は既存の生物のものと相同性が低い事や、貧栄養性等の特徴が明らかになり、新属・新種細菌Rhodoligotrophos appendicifer(突起をもった赤い貧栄養生物の意味)として学術雑誌に発表した。また同地域のたなご池由来サンプルより、低温環境下でプロテアーゼやリゾチーム等様々な分解酵素を生産するLysobacter属細菌(107-E2株)について、生理学的・生化学的特性について詳細な解析を行った。その結果本菌の貧栄養性、氷点下での生育等の特徴が明らかになり、Lysobacter属の新種細菌L. oligotrophicus(貧栄養性のLysobacter属細菌)。また本菌は培養後期(定常期)において可溶性の暗褐色色素を生産する。この色素生産に関する生理学的な解析及び、色素そのものに関する分光分析により、その色素がメラニンであり、糖鎖の結合により可溶化していることがわかった。またT字やY字形の細胞構造をとる細菌(147-1株)について、AFMによりSEMでは見られなかった鞭毛の観察を行う等、新分類群提案に向けた微生物特性に関する研究を進めた。また南極で採取された岩石より単離された、培養条件や生育段階依存的に形態が変化する細菌262-7株について、細胞膜脂質とその極性基の分析等種々の解析を進め、新属・新種細菌として学術雑誌に投稿した。また本菌のゲノムに関しても全ゲノムのドラフト解析に加えて、全長が解読できなかった部分についての解析も進めた。
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International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
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