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2011 年度 実施状況報告書

核酸で構成された人工イオンチャネルの創製

研究課題

研究課題/領域番号 23657072
研究機関京都大学

研究代表者

片平 正人  京都大学, エネルギー理工学研究所, 教授 (70211844)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2013-03-31
キーワード核酸 / 生物物理 / イオンチャネル / 4重鎖 / リポソーム / コレステロール
研究概要

グアニン塩基に富む配列からなる核酸(DNA及びRNA)は、生理的な濃度のカリウムイオン等の存在下で、4重鎖構造を形成する。この4重鎖構造は、イオンの結合という観点から見ると、タンパク質性のイオンチャネルと類似した分子構造を有している。そこで本研究では、4重鎖構造を形成した核酸を膜に埋め込む事で、核酸で構成された人工のイオンチャネルを創製する事を目指している。 カリウムイオン、カルシウムイオン等をキレートする事で4重鎖構造を形成する事が確認されている3種類の核酸d(GGGGTTTTGGGG)、d(G)20及びr(G)20を調製した。脂質2重膜内部の疎水的な環境への親和性を高めるために、これらの核酸の末端にコレステロールを付加したものも調製した。ここにカリウムイオン等を添加して、4重鎖構造を形成させる。一方リン脂質にコレステロールを少量加えたものを真空引きによってフィルム化し、それを温和な条件で水和する事によって、ジャイアントリポソーム(直径は100 umに達し、これは細胞の大きさに匹敵する)を調製した。さらにリポソーム調製機を用いて均一性を高めた。そして水和の際に4重鎖核酸を共存させる事で、4重鎖核酸をジャイアントリポソームの2重膜に組み込む事を行った。 この際ジャイアントリポソーム内にはカリウムイオンとその蛍光指示薬を封入した。蛍光顕微鏡でジャイアントリポソームの内部を、時間を追って観察したところ、リポソーム内部の蛍光強度の減少が観測された。これより4重鎖核酸がチャネルとして機能して、イオンの流出が生じた事が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

4重鎖を形成する3種の核酸を調製し(コレステロールを付加したものも調製した)、これをジャイアントリポソームの膜に組み込む事を行った。そしてジャイアントリポソーム内のイオン濃度を蛍光指示薬を用いてモニタリングしたところ、イオン濃度の減少が見出された。即ち4重鎖核酸がイオンチャネルとして機能している事を示唆する結果が得られた。

今後の研究の推進方策

平成23年度にジャイアントリポソームを用いて得られた知見を、以下のような別の系を用いて検証・発展させる。通常サイズのリポソームにカリウムイオン及び外液より高いpHの水溶液を封入し、ここにプロトンイオノフォアを添加する。4重鎖核酸がイオンチャネルとして機能すれば、リポソーム内外の濃度の差に起因して、カリウムイオンの流出とプロトンの流入が同時に生じ、リポソーム内のpHは下がるはずである。リポソームに蛍光性pH指示薬(例えばHPTS)も封入しておけば、上記の現象を蛍光強度の変化として、蛍光分光器で検出できるはずであるので、この事を検証する。 2重鎖核酸と1本鎖核酸を組み込んで同様な実験を行い、イオンの流れが4重鎖核酸に特異的に観測されるのか、あるいは核酸一般に見られるのかを検証する。現時点では前者の結果が得られる事を予想している。しかしもし予想に反して後者の結果が得られた場合には、塩基が外向きにフリップアウトし、一方糖-リン酸骨格が中心軸に沿って配置したポーリングモデルがイオンの流れの担い手である可能性も検討する。

次年度の研究費の使用計画

主な用途は以下の通りである。4重鎖を形成する核酸を合成する為のアミダイト等の試薬、培地等の細胞培養用の試薬、成果の学会発表の為の旅費、実験補助者への謝金、学会誌投稿料等。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (5件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Intelligent ribozyme that switches its activity in response to K+ through quadruplex formation2012

    • 著者名/発表者名
      Takashi Nagata
    • 雑誌名

      FEBS J.

      巻: 279 ページ: 1456-1463

    • DOI

      10.1111/j.1742-4658.2012.08538.x

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structure of Musashi1 in a complex with target RNA: The role of aromatic stacking interactions2012

    • 著者名/発表者名
      Ohyama et al.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res.

      巻: in press ページ: in press

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural aspects for the recognition of ATP by ribonucleopeptide receptorsStructural aspects for the recognition of ATP by ribonucleopeptide receptors2011

    • 著者名/発表者名
      Nakano et al.
    • 雑誌名

      J. Am. Chem. Soc.

      巻: 133 ページ: 4567-4579

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Heat shock protein 70 inhibits HIV-1 Vif-mediated ubiquitination and degradation of APOBEC3G2011

    • 著者名/発表者名
      Sugiyama et al.
    • 雑誌名

      J. Biol. Chem.

      巻: 286 ページ: 10051-10057

    • 査読あり
  • [学会発表] Sliding-direction-dependent activity of anti-HIV enzyme, and structural basis of anti-prion activity of RNA aptamer2012

    • 著者名/発表者名
      Furukawa et al.
    • 学会等名
      Korea-Japan Bilateral NMR Symposium(招待講演)
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2012 – 316
  • [学会発表] Structural basis of the high affinity of the RNA aptamer against prion protein2011

    • 著者名/発表者名
      Mashima et al.
    • 学会等名
      The 16th annual meeting of the RNA society
    • 発表場所
      プリンスホテル(京都府)
    • 年月日
      2011 – 615
  • [学会発表] Base-deamination rate dependent on the direction of sliding of an enzyme along DNA as revealed by numerical analysis of NMR data, and wood biomass studied by solution NMR2011

    • 著者名/発表者名
      Nishimura et al.
    • 学会等名
      The International Symposium on Nuclear Magnetic Resonance 2011
    • 発表場所
      大桟橋ホール(神奈川県)
    • 年月日
      2011 – 1117
  • [学会発表] Real-time monitoring of the cytidine deamination along single-stranded DNA by an anti-HIV factor, APOBEC3G2011

    • 著者名/発表者名
      Furukawa et al.
    • 学会等名
      The International Symposium on Nuclear Magnetic Resonance 2011
    • 発表場所
      大桟橋ホール(神奈川県)
    • 年月日
      2011 – 1116
  • [学会発表] r(GGA)4 chimeric ribozyme switches its activity in response to K+ via quadruplex formation2011

    • 著者名/発表者名
      Nagata et al.
    • 学会等名
      The 38th International Symposium on Nucleic Acids Chemistry
    • 発表場所
      北海道大学
    • 年月日
      2011 – 1111
  • [図書] 日本化学会編・CSJカレントレビュー"核酸化学のニュートレンド-DNA・RNAの新たな可能性を開く"2011

    • 著者名/発表者名
      片平正人
    • 総ページ数
      5
    • 出版者
      化学同人

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公開日: 2013-07-10  

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