研究課題
グアニン塩基に富む配列からなる核酸は、カリウムイオン等の存在下で、4重鎖構造を形成する。この4重鎖構造は、イオンの結合という観点から見ると、タンパク質性のイオンチャネルと類似した分子構造を有している。そこで4重鎖構造を形成した核酸を膜に埋め込む事で、核酸で構成された人工のイオンチャネルを創製する事を目指した。カリウムイオン、カルシウムイオン等をキレートする事で4重鎖構造を形成する事が確認されている3種類の核酸を調製した。またリン脂質にコレステロールを少量加えたものを真空引きによってフィルム化し、その後水和する事によって、ジャイアントリポソームを調製した。そして水和の際に4重鎖核酸を共存させる事で、4重鎖核酸をジャイアントリポソームの2重膜に組み込む事を行った。ジャイアントリポソーム内にはカリウムイオンとその蛍光指示薬を封入した。蛍光顕微鏡でジャイアントリポソームの内部を、時間を追って観察したところ、リポソーム内部の蛍光強度の減少が観測された。これより4重鎖核酸がチャネルとして機能して、イオンの流出が生じた事が示唆された。次に通常サイズのリポソームにカリウムイオン及び外液より高いpHの水溶液を封入し、ここにプロトンイオノフォアを添加した。4重鎖核酸がイオンチャネルとして機能すれば、リポソーム内外の濃度の差に起因して、カリウムイオンの流出とプロトンの流入が同時に生じ、リポソーム内のpHは下がるはずである。リポソームに蛍光性pH指示薬(HPTS)も封入する事で、上記の現象を蛍光強度の変化として、蛍光分光器で検出した。その結果予想した通りのpHの低下が観測された。即ちこの系によっても、4重鎖核酸がイオンチャネルとして機能する事が強く示唆された。また4重鎖核酸の抗プリオン活性とその構造学的基盤を解明する事及び4重鎖核酸を核酸酵素のスイッチング素子として活用する事にも成功した。
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http://www.iae.kyoto-u.ac.jp/bio/