研究課題/領域番号 |
23657074
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
島村 達郎 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90391979)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | GPCR / G蛋白質共役型受容体 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
Gタンパク質共役型受容体(GPCR)によるシグナル伝達機構を分子レベルで解明するには、その不活性型構造と活性型構造の情報が必須である。本研究では、花粉症などのアレルギーに関係するヒスタミンH1受容体などを用いて、GPCRが不活性化状態から活性化状態へ変化する時の動きを解明することを目的とする。本年度は、酵母を利用して大量発現させることに成功した試料を用いて結晶化に成功していたヒスタミンH1受容体の不活性型構造を、アレルギーの薬である抗ヒスタミン薬ドキセピンとの複合体構造として決定し、論文に発表した。ドキセピンは、受容体選択性が低い抗ヒスタミン薬である。構造を決定してみるとドキセピンは、ヒスタミンH1受容体だけでなく他のアミン受容体でも保存されているアミノ酸に囲まれて結合しており、ドキセピンの受容体選択性の低さは、ドキセピンがアミン受容体間で保存的な構造をしている部位に結合することにより生じていることが解明された。更に、ヒスタミンH1受容体に特有なアミノ酸に囲まれた薬剤結合部位の存在も明らかになり、この構造は、より選択性が高く、強い効果を持つ抗ヒスタミン薬を開発するために役立つものとなった。その後は、活性化状態の構造決定を目指し、アゴニストを結合させて結晶化させる研究を進めている。しかし、最近になり、アゴニストを結合させただけでは完全な活性化状態にはならないことが分かって来た。そこで、抗体を結合させたり、変異を導入することで、活性化状態を安定化させる方法を検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の予定は、まず、ヒスタミンH1受容体の不活性型構造を発表し、次に、活性型構造の決定に向けたコンストラクトを作製することであった。第一の目的である不活性状態の構造に関しては、既に結晶化に成功していたため、計画通りにデータ取得、構造決定に成功した。活性化状態の構造決定に向けたコンストラクトの作製については、T4リゾチームの挿入位置の最適化や、活性型構造の熱安定化の為の変異導入を行っており、順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2011年の初めに、アデノシンA2a受容体とβ2アドレナリン受容体について、アゴニスト結合型の構造が発表された。それらの構造では、活性化に伴い動くと考えられている膜貫通ヘリックスが殆ど動いておらず、不活性型とほぼ同じ構造をとっていた。これらによりアゴニストを結合させただけでは、活性化状態を安定化できないことが示唆された。そのため、当初予定していた計画の内、抗体を作製する手法と変異を導入する手法に絞って研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
抗体作製費、結晶化用試薬、器具類、データ測定旅費などに使用する予定である。
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