研究概要 |
我々は、直鎖状ポリユビキチン鎖を生成するユビキチンリガーゼ複合体LUBACを見いだし、LUBACが生理的には古典的NF-κBシグナル制御を司ることを報告した。さらに本年度の研究で我々は、HOIL-1LとHOIPという2つに加えて、LUBACの新規サブユニットとしてSHARPINを同定し、SHARPIN欠損マウスは重篤な慢性皮膚炎を発症するが、この原因がLUBAC複合体の減少に伴うNF-κB活性化の低下に起因することを明らかにした(Nature, 2011)。また、癌細胞におけるLUBACの役割を解析し、LUBACは骨肉腫細胞の肺転移に関わることを報告した(Int. J.Oncl., 2012)。加えて、LUBACの構成サブユニットの構造解析にも着手した(Biomol. NMR Assign., in press, EMBO Rep., in press)。萌芽研究で目的とした新たな直鎖状ユビキチン結合センサーとして我々は、A20という脱ユビキチン化酵素のC末端に存在するzinc finger7(ZF7)を同定した。A20 ZF7は直鎖状ユビキチンに特異的に結合することを生化学解析に加え、結晶解析により明らかにした(投稿中)。A20-ZF7をタンデムに3個連結すると直鎖状ユビキチンへの親和性が増大し、これをdoxycyclineで誘導する細胞では、TNF-α処理によってNF-κBシグナルは抑制されるがMAPキナーゼの活性化は影響を受けないことを見いだした。この結果は、ZF7のタンデム結合体が細胞内で直鎖状ポリユビキチン鎖と相互作用するセンサーとして機能し、NF-κB経路の活性化を特異的に抑制していることを示唆してる。
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