研究課題/領域番号 |
23657076
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
和田 啓 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (80379304)
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研究分担者 |
福山 恵一 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80032283)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | ウイルス / 赤潮 / 特異的認識 / 構造 / X線結晶構造解析 |
研究概要 |
微細藻類の大量増殖により引き起こされる赤潮は、しばしば水産資源に危機的な被害を与える。近年、有害赤潮原因藻ヘテロシグマに感染する海洋天然ウイルスHaVが単離され、その諸性質が明らかにされた。驚くべきことに、HaVの宿主特異性は極めて高く、ヘテロシグマの株の違いまでも識別して感染するという機構を備えていた。この厳密な感染特異性は、ウイルス粒子と宿主表面のレセプターとの特異的な相互作用に基づいている。本研究では、ウイルス粒子および宿主認識の鍵タンパク質をターゲットとし、特異的感染の分子機構を解き明かすことを目的とし、平成23年度は以下の項目を実施した。・宿主認識の鍵タンパク質(Vp183)の発現HaVの宿主認識に関わる鍵タンパク質はVp183は、74アミノ酸から構成されるモチーフ(ドメイン)を15個以上繰り返して持つタンパク質である。この蛋白質の発現・精製のために、HaVゲノムを鋳型とし、繰り返し単位を1個~3個までのVp183部分蛋白質を大腸菌で発現させた。発現の際、様々な条件(50条件以上)を検討したが、Vp183の発現は検出できなかった。・人工全合成Vp183遺伝子を用いた発現・精製Vp183の遺伝子配列はレアコドンと言われる大腸菌発現には不向きな配列が多数含まれていた。そこで、Vp183の遺伝子を大腸菌発現用に全合成し、その発現を試みた。この結果、大腸菌を用いた系でVp183が発現した。さらに、アフィニティ精製を進め、ごく微量ではあるがVp183を得ることができた。現在、発現量および収率の改善を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究のターゲットであるVp183蛋白質の発現・精製に難航した。当初は全く発現しなかったが、コード遺伝子を全合成することで発現を認めることができた。この遅れにより、平成23年度に実施予定であった結晶化条件の検索および相互作用解析を実施することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度は予定よりも発現実験に難航したことから、当初の予定から遅れている。現在、Vp183に精製用タグ蛋白質を付加する事で収率向上を進めており、次年度はVp183の精製からのスタートとなる。この精製法を確立することによって、以降に計画している結晶化および相互作用解析もスムーズに進展することを期待している。相互作用解析には、ITC法および表面プラズモン共鳴法を駆使し、Vp183とホストとの相互作用を解析する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
計画が少し遅れているため平成23年度に使用予定であった結晶化試薬を購入する。さらに、当初の予定どおり平成24年度には相互作用解析を実施するため、解析用消耗品(センサーチップ類)を購入予定である。また、結晶化の進捗状況に応じて大型放射光施設での測定実験を進めるため、その旅費も支出予定である。成果公表のための学会発表も積極的に進め、その旅費も計上する。
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