RIP(膜内蛋白質限定分解)は、細胞膜あるいはオルガネラ膜を超えて、情報を伝達する分子機構としてきわめて重要であり、機能不全により認知症をはじめ様々な病態をもたらす。しかし、RIPを司る膜内切断プロテアーゼは膜貫通領域に活性中心を持つため、精製と活性の評価が難しく、その酵素機能が明らかではない。本研究では、膜内切断プロテアーゼの活性調節機構を明らかにすることを目的した。研究代表者は、膜内切断プロテアーゼのうち、ヒトγセクレターゼ複合体を酵母において再構成することに成功し、試験管内でγセクレターゼ活性を測定できる系を世界で初めて開発した。この系を用いてヒトγセクレターゼの詳細な酵素学的性状・複合体内のサブユニット構成が活性に及ぼす影響、リン脂質による活性の変化など、酵素としての基本的な性質を明らかにしている。酵母内に再構成したγセクレターゼの切断活性は、酵母の生育を指標に評価することも可能であるため、スクリーニング系としても有用である。平成25年度は、平成24年度から引き続きγセクレターゼ調節因子、調節薬剤の探索を行う一方、γセクレターゼ複合体のサブユニット構成が活性に与える影響を解析した。また、膜内切断プロテアーゼのうち、ヒトsite-2プロテアーゼの活性評価系の開発を目指した。Site-2プロテアーゼはコレステロール調節因子結合タンパク(SREBP)や、ATF6などの小胞体ストレスセンサーを基質として切断する。細菌のホモログについては立体構造も解明されているが、ヒトsite-2プロテアーゼの立体構造は不明で、基質切断を解析するアッセイ系も充分整備されていない。SREBPやATF-6と酵母の転写因子Gal4を融合した人工基質を酵母細胞の中に導入し、切断を簡便に測定できる系の構築を行った。
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