本研究課題は、プロテアソームによるタンパク質分解の結果として生じる短鎖ペプチドが生理的意義を有するという可能性を検討し、具体的なペプチド配列を決定することを目標とした。実際、プロテアソームにより産生される8-10アミノ酸長のペプチド断片はMHCクラスI抗原提示に利用され、T細胞が自己非自己を識別する目印となることが知られている。 まずはじめに、細胞質および核からペプチドをC18カラムにより精製し、質量分析により同定することを試みた。いくつかのペプチド配列は同定されるものの、再現性高く同定されるものはないこと、プロテアソーム依存性に産生されたことを示す証拠が得られなかったことから、このstraightforwardな手法は断念することとした。 もうひとつのアプローチとして、プロテアソームに複数ある特異的触媒サブユニットのひとつβ1のカスパーゼ様活性のみを他の活性に変換した細胞およびマウスの作出に取りかかった。培養細胞において、期待通りの変異を導入することに成功し、この情報に基づき現在β1カスパーゼ様活性改変マウスの作製が進行中である。現在、ESクローンの取得に成功し、キメラマウスを作出中である。 また、より網羅的にカスパーゼ様活性の機能を探索するために、酵母においても同様の変異を導入した株を作製し、Synthetic Gene Arrayの手法により、遺伝学的に相互作用する遺伝子の網羅的スクリーニングを行っている。
|