真核細胞は、DNA高次構造であるクロマチンを有し遺伝情報を安定に維持することで、細胞機能を健全に調節している。クロマチンはコアヒストン各2分子と約147bpのDNAから構成されるヌクレオソームを基本単位とする。クロマチンの機能はアセチル化等のヒストンの化学修飾を介して調節されるが、この過程はクロマチンリモデリングと呼ばれる。また、コアヒストンをヌクレオソームに組みいれる過程はDepositionとよばれ、ヒストンシャペロンにより調節される。 概日リズムは生体の生理機能の周期を外環境に適応させ恒常性を維持する生命現象であり、分子時計と呼ばれる転写機構により制御されている。分子時計においてCLOCKとBMAL1は二量体を形成し転写活性化因子として機能する。 細胞死制御因子DAXXは哺乳動物においてアポトーシス制御因子として同定されたが、近年DAXXが新規のヒストンシャペロンとして機能することが複数のグループから報告されている。一方で、研究代表者は質量分析法を用いたスクリーニングによりDAXXを新規のBMAL1結合因子として同定している。本研究では、生化学的な解析からBMAL1がDAXXのヒストンDeposition活性を促進することを見出した。さらに、BMAL1がコアヒストンのうちヒストンH3に特異的に結合すること及びこの結合がBMAL1によるDAXXのヒストンDeposition能調節に重要な過程であることを明らかにした。これらの知見は、BMAL1がDAXXと協調的に働きヌクレオソームの形成・維持に関与することを支持する。概日リズム制御因子とヌクレオソームの形成・維持の相互関係に関する先行研究は存在せず、本研究の新規性は高いと考えられる。
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