研究課題/領域番号 |
23657088
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
嘉村 巧 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (40333455)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | タンパク質分解 / ユビキチン |
研究概要 |
ユビキチン・プロテアソーム系を介したタンパク質分解が様々な生命現象に重要な働きをしていることが明らかになり、注目を集めてきている。中でも、基質特異性を決めるユビキチンリガーゼ(E3)の研究が盛んに行われている。しかしながら技術的困難さにより現時点までにE3と基質の関係が明らかになっているのはごく僅かである。そこで本研究では、E3、なかでもCullin型E3に対する基質を、細胞内部位特異的光架橋法および免疫沈降法の組み合わせにより同定し、さらにはこれら酵素・基質関係により制御される分子機構を明らかにし、最終的にはユビキチン依存性タンパク質分解という観点から様々な生命現象を系統立てて解明することを目的としている。出芽酵母SCF複合体はRbx1、Cdc53、Skp1およびF-boxタンパク質の4量体からなるが、そのなかでF-boxタンパク質が基質を認識する役割を担っている。データベースを利用して出芽酵母F-boxタンパク質遺伝子(21種類存在する)をクローニングし、免疫沈降法用ベクター(免疫沈降のために3xFLAG Tagを付加している)を作製した。続いて、紫外線照射による架橋反応の条件検討を行っている。具体的には既報のF-boxタンパク質Cdc4を用いて、その基質Sic1が架橋産物として検出できる紫外線照射条件を検討中である。Cdc4のC末側にBPAを導入する部位を替えてSic1との結合がみられる条件を探している最中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では、細胞内部位特異的光架橋法および免疫沈降法を用いてE3の基質の同定およびその機能解析を目的としている。まず、細胞内部位特異的光架橋法を効率的に行うための条件検討を既報のF-boxタンパク質Cdc4とその基質Sic1を用いて行っているが、まだいい条件の設定にいたっていないため、やや遅れていると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
細胞内部位特異的光架橋法を効率的に行うための条件検討を既報のF-boxタンパク質Cdc4とその基質Sic1を用いて継続して行い、実験条件の最適化を図る。引き続き、F-boxタンパク質のC末側の任意の部位のアミノ酸残基に対応するコドンをアンバー終止コドンに置換し、BPAが導入されるようにする。これらの変異を加えたF-boxタンパク質と相互作用するタンパク質を、細胞内部位特異的光架橋法および免疫沈降法を用いて同定する。F-boxタンパク質と新規基質候補タンパク質の内在性レベルでの結合を免疫沈降法により確認する。次に、F-boxタンパク質群の新規基質候補タンパク質の安定性に及ぼす影響の検討する。そして、昆虫細胞発現系を用いてSCF複合体を精製し、新規基質候補タンパク質に対する試験管内ユビキチン化反応を検討する。F-boxタンパク質と新規基質候補タンパク質を出芽酵母に発現させ、新規基質候補タンパク質の安定性に及ぼす影響を検討する。さらには、F-boxタンパク質による新規基質候補タンパク質の分解制御が細胞生物学的にどのような影響を及ぼすかを検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞内部位特異的光架橋法を効率的に行うための条件検討に酵母培養用培地、シャーレ、アミノ酸類が必要である。また免疫沈降するための抗体やWestern blottingのための発色試薬が必要である。F-boxタンパク質のC末側の任意の部位のアミノ酸残基に対応するコドンをアンバー終止コドンに置換し、BPAが導入するためのプライマー、PCR試薬が必要である。昆虫細胞を実験に用いるがそれらを培養するためのシャーレや培地さらには血清が必要である。酵母の変異株の作製あるいは新たに同定した遺伝子の発現ベクター作製するためのプラーマーやPCR試薬さらには制限酵素が必要である。作製した発現ベクターを細胞に導入するための試薬や抗生物質が必要である。新たに同定したタンパク質に対する抗体が必要である。新たに同定した基質候補のE3との結合や発現量を調べるために行なう免疫沈降法やWestern Blottingのための試薬が必要である。新たに同定したE3と基質に制御される生命現象を解明するために細胞周期を同調させる試薬やDNA損傷を起こす薬剤などが必要である。本研究で得られた成果を広く発信するためには、分子生物学会など国内の学会参加に伴う旅費は必須である。また、本研究を遂行するに当たり幅広い分野の方々からご助言をいただくことが必要になるため研究打ち合わせのための旅費は必須である。研究成果を発表するためには論文の英文校正は必須であり、出版に伴う費用も必須である。
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