研究課題/領域番号 |
23657089
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
増井 良治 大阪大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40252580)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 発現制御 / 蛋白質 / 遺伝子 / 細菌 |
研究概要 |
本研究は,光に依存した転写調節を行うタンパク質を利用して,目的遺伝子を光照射により発現させる方法を開発するものである。具体的には,光に依存して遺伝子発現を誘導する高度好熱菌 Thermus thermophilus HB8 由来の転写調節タンパク質LitRを利用して,LitR 結合配列を遺伝子上流に組み込むことにより,光照射によって目的遺伝子の発現を制御できるシステムを確立することを目的とする。 今年度はまず LitR 遺伝子のプロモーター領域にある LitR 結合配列をレポーター遺伝子 (カナマイシンあるいはハイグロマシンに対する耐性因子) の上流に組み込んだプラスミド,ならびに litR 遺伝子と LitR 結合領域を含む DNA 断片をレポーター遺伝子の上流に組み込んだプラスミドを構築した。これらのプラスミドを高度好熱菌に導入し,青色光照射によるレポーター遺伝子の発現が誘導されるかどうかを薬剤入りプレート上での生育によって確認した。その際,誘導に適した光照射の条件などを検討した。さらに誘導効率を改善するため,当初 LitR 結合領域と予想した領域の長さを変えたプラスミドも構築した。 平行して,大腸菌用の発現ベクターのプロモーター領域に対して,litR 遺伝子と LitR 結合領域を含む断片の導入を行った。 また,光発現制御法を適用する対象として,高度好熱菌の必須遺伝子の探索を行い,従来必須ではないとされていたオリゴ RNA 分解酵素が必須遺伝子であることを明らかにした。同じく適用対象として,タンパク質のリン酸化やアセチル化を触媒する酵素の発現用プラスミドの構築を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
LitR 結合領域と予想される配列をプロモーター領域にもつレポーター遺伝子の構築に手間取ったために,全体として予定した達成度よりは若干遅れる結果となった。具体的には,プラスミドをもつ形質転換体を選択するための薬剤耐性因子と,今回の光発現誘導実験のレポーターとして用いる薬剤耐性因子が同一のプロモーターによって制御される構築になっていたため,それぞれが独立に発現できるような改変を加える必要が生じた。また,当初構築したプラスミドでは予想したほどの発現効率が見られなかったため,LitR 結合配列の長さを変えたり,光照射の方法を変えるなど,発現効率の改善を行なっているところである。 光発現カセットの確立については,大腸菌用の発現ベクターへ導入して検証するほうが確実と思われたので,そちらを優先して進めている。 光発現誘導法を適用する対象候補については,有意義なものをいくつか見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
光照射による発現誘導の条件を早期に確立した上で,当初の予定どおり,まず高度好熱菌の必須遺伝子について,条件突然変異株を作製し,その表現型などを調べることで,細胞内での機能を推定する手がかりを得たいと考えている。 次に,近年注目されているバクテリアにおける翻訳後修飾を解明する助けとして,光発現誘導法を用いて高度好熱菌内でタンパク質(脱)リン酸化酵素や(脱)アセチル化酵素を過剰に発現させることにより,修飾部位の同定や修飾酵素の基質特異性などを明らかにするために役立てたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
光発現カセットを導入するための遺伝子操作と菌の培養が研究の基盤となるので,研究費の多くは DNA 操作のためのオリゴヌクレオチド合成や酵素,培地の材料等の購入に充てる予定である。さらに,本手法を適用した機能解析においては質量分析も行うので,研究費の一部はそのために必要な試薬や器材の購入にも充てる予定である。
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