本研究では、細胞の生と死を司る細胞小器官(オルガネラ)であるミトコンドリアの品質管理機構、とりわけオートファジーの仕組みを利用してミトコンドリアを丸ごと分別・除去する機構「マイトファジー」に焦点を絞る。具体的には、出芽酵母をモデルに用いて、マイトファジーを人為的に抑制したり、促進したりするための分子基盤とそれに基づく制御ツールの確立を目指している。 平成23年度においては、ミトコンドリアの分解を定量解析するための適切なプローブについて、改良と詳細な検討を行った。ミトコンドリア病態モデル細胞の構築については、上記の改良発現システムに基づき、蛍光イメージング解析のための光活性化mito-GFPとmito-mCherry発現細胞株の構築を進めている。 また、申請者の研究室で解析中のマイトファジー変異体の中に、マイトファジー特異的因子Atg32の発現量が低下しているものを見出した。これまでの研究で、Atg32の発現誘導がマイトファジーの活性化に重要であることがわかっており、この変異体が欠損しているタンパク質の活性を調節することで、マイトファジーの効率を人為的に制御できる可能性を考えている。具体的には、リン脂質メチル基転移酵素およびタンパク質N末端アセチル基転移酵素の欠損細胞でAtg32の発現が抑制されていた。今後は、これらのタンパク質がどのようなメカニズムでAtg32の発現誘導に関与しているかを明らかにしてゆく。具体的には、Atg32との物理的相互作用を免疫共沈降で解析するとともに、細胞内局在を生細胞蛍光イメージングで観察する。
|