研究課題/領域番号 |
23657093
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
野村 一也 九州大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (30150395)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2012-03-31
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キーワード | 卵母細胞 / 生殖幹細胞 / 配偶子幹細胞 / GPIアンカー / コンドロイチン / 細胞分裂 / プロテオグリカン |
研究概要 |
コンドロイチンプロテオグリカンによる細胞分裂の制御の分子メカニズムをあきらかにするため、初期発生と生殖細胞発生の両局面における細胞分裂/細胞周期の制御機構を探るための実験・解析を行った。一連の実験の結果:(1)コンドロイチン合成酵素SQV-5の活性を阻害すると生殖細胞特に卵母細胞の形成に影響をあたえることがRNAi実験等で判明した。生殖幹細胞(配偶子幹細胞)の細胞分裂と卵母細胞の細胞周期の進行、初期胚細胞の細胞分裂の三者でコンドロイチンがかかわっている可能性がでてきたわけである。(2)そこで生殖巣の発生に影響を与える遺伝子を探索した。ほとんど研究が進展していなかった線虫のGPIアンカー型蛋白質の全貌を明らかにし、さらにGPIアンカー型蛋白質の生合成が生殖幹細胞と卵母細胞の細胞分裂に不可欠であることを発見し論文発表した。(3)さらに、プロテオーム解析によって細胞分裂にかかわっている可能性のあるGPIアンカー蛋白質とその他の遺伝子、合計16種類以上を同定してトランスジェニック解析を含めた詳細な解析を行っている。(4)これと並行して初期胚分裂にかかわっている遺伝子を網羅的にバイオインフォマティクスで列挙し、すべての遺伝子についてRNAiをおこなうことでコンドロイチンによる細胞分裂制御の遺伝子ネットワークの解明を試みた。未知の遺伝子ネットワーク候補が同定できつつあるので、これらの遺伝子相互作用をin vitro解析の手法の利用も含めて実験的に検討し、コンドロイチンによる細胞分裂制機構の分子レベルでの解明をすすめたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
卵母細胞と生殖幹細胞の細胞分裂にかかわるGPIアンカー合成の役割の解明と論文発表のための追加実験に時間を要した。このため遺伝子ネットワーク解析とRNAiは当初の計画通り順調に進んだが、トランスジェニック解析についてやや遅れを生じて期間の延長が必要となった。しかし従来予想されていなかったGPIアンカー型蛋白質合成の生殖幹細胞の分裂(体細胞分裂)への関与を明らかにした、世界ではじめての発見を発表するための実験の追加のために要した遅れであり、研究自体は順調に進展していると評価する。
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今後の研究の推進方策 |
コンドロイチンプロテオグリカンと結合する分子をアフィニティークロマトグラフィーその他の方法で同定する。コンドロイチンプロテオグリカンのコア蛋白質の候補であるSMC3その他の分子が真にコンドロイチンによる細胞分裂制御にかかわっているかどうかをトランスジェニック解析や免疫沈降、プロテオーム解析などの手法、レーザー共焦点顕微鏡による動態解析などの手法で同定する。初期胚と生殖幹細胞や卵母細胞における細胞分裂を制御する遺伝子を同定しこれらとのコンドロイチンとの関係を解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
上述したように、前年度でコンドロイチンプロテオグリカンの同定と機能解析を行い、コンドロイチンプロテオグリカンが細胞分裂を制御する分子メカニズムの解明の糸口を得た。GPIアンカー型コンドロイチンプロテオグリカンの存在の可能性の検討を含めて、得られた成果の確認と発展のため、以下の用途で研究費を使用する予定である。遺伝子機能阻害実験、遺伝的相互作用解析実験、アフィニティークロマトグラフィー等の生化学実験によるコンドロイチンと蛋白質の相互作用の実態の解明のための物品費。レーザー共焦点顕微鏡による遺伝子産物の細胞分裂における動態解析その他のための物品費。さらに研究成果は学会発表、論文発表などを予定しており、旅費、投稿料金、英文校閲料金などにも充当する予定である。
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