研究概要 |
光誘起膜電位発生膜タンパク質ハロロドプシン(HR)が神経細胞ネットワークの革新的光制御技術として期待されているが、光刺激効率の向上、ハロロドプシン3量体安定化と機能変調を解明することが重要であると予測された。本研究では、こららの課題を解決することを目的とした。初年度は、系統的な変異体作製とその分光学的特性の分子レベルの解析を計画し、以下の成果が得られた。(1)ハロロドプシンNpHR変異体の極大吸収波長(λmax)の系統的解析 2種類のハロロドプシンNpHR, HsHRのアラインメント相同性比較およびNpHR, HsHR結晶構造座標データから、HR機能に重要な残基を推定した。この構造科学的予測からNpHR変異体(25アミノ酸残基点変異, 2ループ領域の部分削除体)を大腸菌発現系により作製した。機能型タンパク質として得られる試料について、可視光波長領域の吸収スペクトル観測を行い、吸収極大波長λmaxの変化を解析することができた。特にループ領域の変異体試料データの系統的解析によって、λmaxシフトが反転する異常シフトを発見した。(2)HR変異体の静的構造安定性評価 実験(1)で得られた試料からλmaxシフトを示す候補についてCl解離定数の決定、可視CD測定による3量体形成能の測定、退色速度から構造安定性実験を実施した。特にループ領域の系統的部分削除体のλmaxシフトが反転する異常シフトは、ループ長の構造安定性とも強い相関があることが解明された。次年度はさらに本研究で作製された試料についてフラッシュフォトリシスによる可視光レーザーパルスによる過渡的吸収変化のフォトアクティビティ解明し、静的構造安定性との関係解明が課題として絞り込まれた。
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