研究課題
本研究目的は、自然界で最も幅広い吸収帯を示す光受容タンパク質の一つである、"ロドプシンタンパク質群"の「色を知り」「色を作る」ことである。代表者がこれまで蓄積してきた、幅広い吸収極大を持つ数十種類のロドプシンを実験的に解剖し、分担者が理論的に予見し解釈を与えることとした。1)実験(代表者):560nm付近(紫色)に極大吸収を持つ、センサリーロドプシンI(SRI)と、バクテリオロドプシン(BR)について、種々の変異体を作製し、480~600nmの様々な色(吸収帯)を持つ人工的ロドプシン分子の作製に成功した(前者はSudo et al. (2011) J. Biol. Chem., 後者はSudo et al. in preparation)。この研究を通じて、新しい色制御メカニズムを提案すると共に、発色団レチナールの構造及び、周辺アミノ酸残基の重要性を確認した。現在、さらに対象をアナベナセンサリーロドプシン(ASR)やセンサリーロドプシンII(SRII)などに拡大し、その普遍性について検討を行っているところである。2)理論(分担者):量子化学計算の高精度化を目指し、アルゴリズムや力場の検討を行った。現在、両研究の融合を目指し、議論・実験を進めているところである。特に、長波長側への発展を目指している。今後は、ロドプシンの色特性(吸収極大、吸収幅など)の限界に挑戦し、偶発的なアプローチに頼らない色タンパク質の創成へと繋げていきたい。
2: おおむね順調に進展している
ロドプシンは試料調製が難しい膜タンパク質に属し、試料の安定的取得が課題であったが、様々な微生物から新規分子を単離・精製することで、その課題を克服した。それにより、数ナノメートル単位で、480-600nmの様々な色(吸収帯)を持つロドプシンを人工的に作り出すことに成功した。また、より精度の高い計算に耐えうる手法を開発し、実験に示唆を与えるような一歩踏み込んだ計算ー実験の融合のプラットフォームを作ることにも成功した。残りの期間で十分に研究目的を達成可能である。
今後は、現在まで別個に行っている、実験と計算を融合させることが重要となる。そのために、密接に議論を行い、対象とするロドプシン分子を絞り込んでいく。その分子に対し、集中的に実験と計算及びその融合を行うことで、ロドプシンタンパク質の波長特性の限界に挑戦し、神経科学や生物物理など、多方面から望まれている色タンパク質の創成へと繋げていきたい。
次年度は、絞り込んだロドプシンに対し、集中的に実験・計算を行う。作製する人工的ロドプシンはトライアンドエラーを繰り返すため多種にわたり、発現・精製に多くの消耗品を要することが予想される。また、計算コストの増大も予想される。そのため、全期間の研究費のうち、当該年度に多くの研究費を必要とする。
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