研究課題/領域番号 |
23657100
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
須藤 雄気 名古屋大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (10452202)
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研究分担者 |
林 重彦 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (70402758)
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キーワード | 生物物理 / 超分子化学 / ナノバイオ / ロドプシン |
研究概要 |
本研究目的は、自然界で最も幅広い吸収帯を示す光受容タンパク質の一つである、“ロドプシンタンパク質群”の「色を知り」「色を作る」ことである。代表者がこれまで蓄積してきた、幅広い吸収極大を持つ数十種類のロドプシンを実験的に解剖し、分担者が理論的 に予見し解釈を与えることとした。 1)実験(代表者):560nm付近(紫色)に極大吸収を持つ分子について、種々の変異体を作製し、480~600nmの様々な色(吸収帯)を持つ人工的ロドプシン分子の作製に成功した(Okazaki, et al., 2012, PLoS One, Sudo et al. submitted)。この研究を通じて、新しい色制御メカニズムを提案すると共に、発色団レチナールの構造及び、周辺アミノ酸残基の重要性を確認した。さらに対象を我々が発見した分子MRに適用し、その普遍性について検討を行った(Mori et al., 2013, Chem. Phys.)。 2)理論(分担者):量子化学計算の高精度化を目指し、アルゴリズムや力場の検討を行った。上記の通り、短波長化については理論・実験の両面から実証したものの、長波長側への発展が課題として残っている。今後は、ロドプシンの色特性(吸収極大、吸収幅など)の 限界に挑戦し、偶発的なアプローチに頼らない色タンパク質の創成へと繋げていきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロドプシンは試料調製が難しい膜タンパク質に属し、試料の安定的取得が課題であったが、様々な微生物から新規分子を単離・精製することで、その課題を克服した。それにより、数ナノメートル単位で、480-600nmの様々な色(吸収帯)を持つロドプシンを人工的に 作り出すことに成功した。また、より精度の高い計算に耐えうる手法を開発し、実験に示唆を与えるような一歩踏み込んだ計算ー実験の融合のプラットフォームを作ることにも成功した。一方で、細胞毒性の低減のために600nmを越えるような長波長化については試行錯誤が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
実験・理論の融合は順調に進んでいる。特に短波長化については実験-->理論-->実験の好循環により、ほぼ限界と考えられる454nmの分子の作成に成功している。 今後は、長波長化が重要となる。分子構造の最適化を理論により行い。実験面では非天然アミノ酸や最も効果的と考えられる変異の導入により、ロドプシンタンパク質の波長特性の限 界に挑戦し、神経科学や生物物理など、多方面から望まれている色タンパク質の創成へと繋げていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度は、大量培養とタンパク質分子の精製に必要な消耗品に多くの研究費をさく。また、学会活動などを通じて積極的に成果の外部出力を行う。
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