研究課題
本研究では、多孔体界面を利用したタンパク質結晶化技術の開発を目的としている。昨年度は、アガロースゲルなどの様々な多孔体素材を使って濃度や塗布量の最適化を行ったところ、アガロースゲルを塗布量2マイクロリットルで塗布することによって良好な結果が得られた。具体的には、エラスターゼの結晶化スクリーニングにおいて、多孔体がない結晶化スクリーニングでは8条件で結晶が得られたが、多孔体界面での結晶化では結晶が得られた条件が13条件となり増加した。このことから、多孔体に接触させることによって核発生が誘発される現象を確認できた。また、申請者らが見出した溶液攪拌法との組み合わせ技術を検討した。蛋白質-蛋白質複合体(GAPDH-CP12)で品質の向上がみられ、構造解析の成果にも繋がった(Structure, 2011)、また、リゾチームを使った実験では、結晶の温度因子の低下が見られたため、通常の溶液攪拌と同様に品質向上に効果がある可能性があると考えられる。
1: 当初の計画以上に進展している
初年度は、(1)モデルタンパク質を用いた多孔体界面結晶化法の結晶化スクリーニングにおける効果の実証(2)結晶成長過程に効果的な溶液攪拌法との組み合わせを計画していた。前述したようにこの両実験を実施し、さらに良好な実験結果を見出しており、計画通り研究が進展していると考えている。さらに、蛋白質-蛋白質複合体(GAPDH-CP12)で品質の向上がみられそれが構造解析に繋がったことから当初の計画以上に進展していると考えている。
他の蛋白質や難結晶性蛋白質についてさらに多孔体界面での結晶化実験を進める予定である。最適化条件の探索を行い、本技術の有用性を示す。またレーザー照射直下にタンパク質を輸送する「レーザー核発生技術」の発想を利用して、成長の遅い結晶表面付近にレーザー照射によりタンパク質分子を成長表面に凝集・再配列化させることで、結晶成長を促す新しいレーザー結晶成長加速技術の開発に取り組む。フェムト秒レーザーを用いた多孔体界面結晶化を行う予定である。
次年度は、(1)、(2) の研究を遂行するため蛋白質の培養・精製・結晶化に用いる試薬・結晶化プレートなどの消耗品に使用する予定である。また、本成果を発表するため、また、情報収集のための旅費に使用する予定である。
すべて 2011
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件)
Structure
巻: 19 ページ: 1846-1854
doi:10.1016/j.str.2011.08.016