【平成24年度実施計画: 形態学的・電気生理学的な特徴を同定した一細胞回収・再配置技術の開発】 初代神経細胞を用い、一細胞毎に伝達方向・細胞の種類を制御した人工的神経細胞回路を構築することで従来の分散培養や脳組織を利用したスライスカルチャーでは複雑すぎて理解できなった神経のネットワークレベルでの基本動作原理、記憶形成機構、情報処理機構の解明を目的としている。 【研究結果の具体的内容】 特定の神経細胞を一細胞単位で回収する技術としてアルギン酸薄膜層を培養シャーレに施し、薄膜上で神経細胞を培養することで一旦神経突起を伸張させ、それを指標に特定の神経細胞を回収する技術を開発することに成功した。本研究成果を平成24年度にPLoS Oneにて報告することが出来た。この神経細胞一細胞単位で回収する技術と、神経細胞の伝達方向性を制御しながらパターニングできるアガロース加工技術を組み合わせることにより高確率で人工神経回路を作製すること出来るようになった。 【意義・重要性】 神経細胞は他の細胞に比べ脆弱なため、特定の神経細胞のみを一細胞毎回収する技術はなかった。理由として神経細胞は浮遊状態ではグリア細胞と区別しにくく、一旦培養を開始し神経突起伸張を確認しなければ神経細胞を同定する事は困難であった。一方、一旦神経突起が伸びた状態では回収の時に神経突起を傷つけすぐに死んでしまうため、一細胞単位での回収は非常に困難であった。本技術はこれらの課題をクリアした研究であり、本技術により特定の培養神経細胞を回収し神経ネットワークを人工的に構築し、神経ネットワークの情報処理機構の基本原理を検証できるシステム構築を行う可能性が高まった。
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