研究課題/領域番号 |
23657113
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
山梨 裕司 東京大学, 医科学研究所, 教授 (40202387)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 遺伝子 / 発現制御 / シグナル伝達 / 細胞・組織 |
研究概要 |
神経筋接合部(NMJ)は骨格筋収縮の運動神経支配に必須のシナプスであり、哺乳動物のNMJは各筋管(筋線維)の中央部のみに形成される。これは多核の単一細胞である筋管において、NMJ構成因子の遺伝子発現がその中央部の核に選択的に起こることに起因する。胚発生の後期におけるこのような発現制御は NMJ構成因子の1つである受容体型チロシンキナーゼMuSKによって支配されるが、その分子機構は未解明である。そこで、本研究では、同じくNMJ構成因子であるDok-7がマウスの発生中期までは他のNMJ構成因子と同様の発現パターンを示しながらも、例外的に、発生後期のMuSKによる核選択的な発現制御を受けないと言う独自の知見に立脚し、Dok-7と他のNMJ構成因子の発現制御機構を比較、検討することによって、MuSKによる核選択的な転写制御機構の解明を目指す。 本年度の研究においては、まず、Dok-7遺伝子の転写制御領域の解析を進めたところ、筋芽細胞から筋管細胞への分化に応じて亢進する転写活性は当該遺伝子の転写開始点からその上流3000残基程度の領域に保持され、その一部は転写開始点の上流50残基の領域にも保持されていることが明らかになった。また、骨格筋特異的にDok-7を過剰発現することでNMJの構成因子の遺伝子発現が増強しているトランスジェニックマウスとDok-7の欠失によってNMJを失ったノックアウトマウスを用いた解析から、前者に特異的に高発現している転写制御因子として既知のErmを含む複数の候補因子を同定した。現在、NMJの形成過程におけるこれら候補因子の発現動態の解析を進めると共に、我々が同定したDok-7の転写制御領域と他のNMJ構成因子の転写制御領域の比較により、前者のみに存在しない、もしくは、それのみに存在する配列とそれらの配列を標的とする転写制御因子のリスト化を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
神経筋接合部のオミックス解析によるNMJ関連転写制御因子のリスト化は計画の枠を越えた進展と言えるが、マウスを用いた解析については若干の遅れがあるため。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に詳細な解析を進めたDok-7の転写制御領域と他のNMJ構成因子の転写制御領域ついて、前者のみに存在しない、もしくは、それのみに存在する配列とそれらの配列を標的とする転写制御因子に関する研究を推進する。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度においては、筋管中央部での核選択的な転写制御を担う塩基配列の候補について、それらの転写制御機能に関するマウス個体レベルでの解析が未了であった。そこで、次年度の研究費を使用し、この未了分の解析を実施する。その他の研究計画に特筆すべき変更はない。
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