研究概要 |
本研究は、染色体分離の引き金となる現象を突き止めることを目的として開始した。当該年度は、コヒーシン切断酵素であるセパレースのバイオセンサー(特許出願済)を用いて、セパレース活性化のキネティックスを解析した。 セパレースのバイオセンサーを用いて染色体分離の前後におけるセパレースの活性の変化を測定したところ、セパレースは染色体全体で染色体分離の直前に急激に活性化していることがわかった。そこで、このような急激な活性化を可能にする機構を明らかにするために、セパレースの抑制因子であるセキュリンあるいはサイクリンBの関与を調べたところ、それぞれ個別にセパレース抑制ができない条件ではセパレース活性化キネティックスには異常は見られなかったが、両方ともセパレース抑制できない条件においては染色体分離より大幅に早く活性化が始まるが、弱い活性のままであることがわかった。さらにこの解析の過程で、サイクリンBによってセパレースが抑制されない条件では(上記のようにセパレース活性化キネティックスは正常だが)、染色体の極方向への移動に異常が見られた。詳細な解析の結果、この異常がサイクリンB―Cdk1キナーゼがセパレースによって抑制されなくなっていることによることを突き止めた。したがって、セパレースがコヒーシン切断と同時に、サイクリンB-Cdk1キナーゼの活性を抑制して微小管による牽引力の増大を促進している、という予想外の結果を得たことになる。以上の結果をまとめてDevelopmental Cell誌上にて報告した(Shindo et al., 2012)。
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