研究概要 |
上皮組織内の細胞の多くは、細胞の頂部-基部軸と直交する組織平面の特定の軸に沿った極性を獲得する。これは、平面内細胞極性(planar cell polarity, PCP)と呼ばれ、ほとんどの多細胞生物において見られる一般的な現象である。これまでPCP制御分子は機能的な違いから大きく2つのグループ(Ds/Ft グループとFz/Fmiグループ)に分類されていたが、申請者は、独自に同定した新規PCP分子Jitterbug(Jbug)の機能解析において、未知の「第3のPCP制御グループ(“Jbugグループ”)」の存在を示唆する結果を得ている。本研究では、Jbugの機能解析を通してこの第3のグループの全貌を明らかにし、この新規グループに属する分子群を介した新たなPCP制御機構を解明することを目的とする。 本年度、昨年度より継続中のJbugグループ構成因子を同定するためのRNAiスクリーニングを完了し、Jbugグループ構成因子候補を合計28個(Member of Jbug Group (MJG) 1-28)同定することに成功した。その内の9遺伝子に関しては、異なるRNAi系統を用いて、最初のスクリーニングと同様の結果を得た。次に、Jbugグループ遺伝子と他のPCP遺伝子との遺伝学的相互作用を解析したところ、Ft/Dsグループ遺伝子のノックダウンによって、jbugおよびmjg遺伝子ノックダウン個体におけるPCP異常が抑圧された。また、jbugノックダウンは、Ft/DsグループおよびFz/Fmiグループ分子の局在には影響を与えなかった。以上の結果から、Jbugグループ分子はFt/DsグループまたはFz/Fmiコアグループの上流制御因子としては機能しないが、Ft/Dsグループと機能的に連関することが示唆された。
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