研究課題/領域番号 |
23657123
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 健 東京大学, 総合文化研究科, 准教授 (00303602)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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キーワード | 小胞体 / コートタンパク質 / フォトトロピン / 低分子量GTPase / 小胞輸送 / 出芽酵母 |
研究概要 |
真核細胞内の代表的な物質輸送システムである小胞輸送について、この反応を駆動する因子に、光依存的に大きな構造変化を起こすことが知られている植物由来の光センサータンパク質であるフォトトロピンを融合することにより、光照射によって生きた酵母細胞内の小胞輸送反応を光制御するシステムの構築を試みた。当初の計画ではシロイヌナズナ由来のフォトトロピンを光制御のためのユニットとして使用する予定であったが、より大きな構造変化が期待できるエンバク由来のフォトトロピンを使用することとし、エンバク種子より光センサータンパク質であるフォトトロピンPHOT1をコードするcDNAを単離した。活性制御のターゲットとして、出芽酵母における小胞体からの輸送小胞形成反応において中心的な役割を果たす低分子量GTPase Sar1pを選定した。このSar1pが膜と結合するN末端部位にPHOT1中の光受容部位であるLOVドメインとそれに隣接するJアルファヘリックス領域を融合させ、さらにアフィニティ精製用のGSTを融合させたGST-PHOT1-Sar1pをデザインし、このタンパク質をコードする大腸菌発現ベクターを作成した。大腸菌においてGST-PHOT1-Sar1pの発現、精製を行い、部位特異的プロテアーゼによりGST部分を取り除いたPHOT1-Sar1pの精製標品を得ることができた。また、得られたPHOT1-Sar1pについて分光学的な解析を行ったところ、この分子にフラビンの結合が示唆されるデータが得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究計画において設定した今年度に達成すべき項目はほぼ全てについて手を付けられたものの、光センサータンパク質をコードする遺伝子が大腸菌に対して弱い毒性を示すという予想外の困難があり、目的とする発現ベクターの構築に時間を費やしたため、作成した光センサー融合タンパク質の試験管内再構成系を用いた生化学的評価がやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
初年度において作成した光センサー融合タンパク質について、輸送小胞形成の試験管内再構成系を用いた活性評価を行う。また、目的の活性が確認されたタンパク質については、酵母細胞内で発現させる酵母株を構築し、酵母細胞内での小胞輸送反応の光活性制御の検討を行う。初年度において、光センサータンパク質をコードする遺伝子が大腸菌に対して弱い毒性を示すという予想外の困難があり、目的とするタンパク質を発現させるベクターの構築に多くの時間を費やしたため、その後に予定していた大腸菌によるタンパク質の大量精製、および試験管内再構成系による活性評価への着手が遅れたため、これらの実施に伴う消耗品分として次年度使用額が生じた。
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次年度の研究費の使用計画 |
初年度に引き続き、小胞体からの輸送小胞形成に関わる因子を対象として、光センサー融合タンパク質の作成に伴い、分子生物学試薬、微生物培養培地、生化学試薬の購入のために消耗品の購入を行う。また、初年度に予定していたタンパク質の大量精製、および試験管内再構成系による活性評価を実施するための消耗品(主に試薬類)の購入についても行う。また、成果発表のための旅費、および研究成果の論文発表のための費用についても計上する。
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