研究概要 |
γチューブリン環状複合体(γTuRC)は微小管重合核として必須の役割をもつ。その主要構成分子であるγチューブリンは、多くの生物種で2種存在する。哺乳動物の場合、TUBG1、TUBG2 の2 種類のγチューブリンはアミノ酸配列が95%以上同一であり、両者の機能的な違いは不明である。本研究はTUBG2の発現が顕著なマウス卵、初期胚を用い、両者の機能の違いを探ることを目的としていた。また、癌細胞における異所的な TUBG2の発現の有無を調査し、新たな癌マーカーや、治療の標的候補としての可能性を検討することを目指した。 平成24年度までにTUBG2タンパク質を発現する癌由来細胞株15種類を見いだし、うち4細胞株についてTUBG2の発現抑制により、TUBG1が充分量発現しているにも関わらず増殖が抑制されることを見出していた。本年度はTUBG2をごく少量のみ発現する細胞株においてTUBG1を発現抑制した結果、1)TUBG1量が本来のおよそ15%まで減少しても異常は現れない、2)およそ20%未満になるとTUBG2の発現量が相補的に増加し、TUBGタンパク質総量はもとのおよそ20%を維持する、3)総量は維持されるもののTUBG2が主なγtubulinとなった場合、分裂期に単極紡錘体ができ増殖停止に至る、ことを見いだし、TUBG1,2には分裂期における機能に差がある可能性が示唆された。更に、TUBG1発現抑制細胞株からの転写産物を解析した結果、TUBG2には2新規のエクソンを含むスプライスバリアント(TUBG2Bと命名)が存在することを見いだし、このTUBG2Bはヒト脳にも存在することを確認した。またTUBG2およびTUBG2Bからの翻訳産物は細胞内局在やγTuRC形成能に違いがあることを見いだした。 本研究により見いだしたTUBG1,2の機能の差を示唆する結果について、今後更に解析を進め、TUBG2特異的な機能の本質に迫りたい。
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