1. PEMT経路を欠き、choline依存性となった出芽酵母変異株(cho2Δopi3Δ)を用い、クリック反応でホスファチジルコリンを検出するために使用するpropargylcholineが完全なcholineの代替物となり得るか否かを検証した。細胞はpropargylcholine添加培地でもcholine添加培地と遜色なく増殖し、propargyl基を持つホスファチジルコリンが生理的機能を維持していることを示唆した。 2. propargylcholine添加培地で培養した出芽酵母の脂質組成を薄層クロマトグラフィーで解析し、通常培地の場合と大きな変化がないことを確認した。 3. propargylcholine存在下に1日以上培養した出芽酵母を急速凍結し、作製した凍結割断レプリカ上のpropargyl基をbiotin-azideと結合させたのち、抗biotin抗体、金コロイド標識二次抗体で標識した。陰性対照として、propargylcholineを与えない酵母サンプルでは標識が生じないことを確認した。核膜(内核膜・外核膜)、小胞体、液胞、ミトコンドリア(内膜・外膜)、ゴルジ体、エンドソームについては内葉・外葉間の標識密度に顕著な差はなく、ホスファチジルコリンは対称に分布していると考えられた。一方、形質膜ではほぼ内葉に限局して標識が認められた。これに対して哺乳類細胞の形質膜では内葉・外葉ともに標識が見られた。
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