研究課題/領域番号 |
23657127
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
生沼 泉 京都大学, 生命科学研究科, 助教 (40452297)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2013-03-31
|
キーワード | R-Ras / 低分子量G蛋白質 / アクチン / インテグリン / M-Ras |
研究概要 |
R-Ras は、全身の幅広い組織で、広範な時期において発現しており、細胞運動や増殖、血管新生を制御している。一方、反発性ガイダンス因子Semaファミリーは、その特異的な細胞膜1回貫通型受容体 Plexin を介して細胞運動や血管新生の阻害を引き起こす因子である。悪性度の高いがん細胞では Plexin の細胞内領域に点変異が生じていることが知られている。Rasファミリーの中でも、H-Ras、K-Ras、N-Ras は代表的な原がん遺伝子産物であり、増殖因子の刺激による細胞の分化・増殖における中心的な役割を担っていることから、これまでこの分子を対象とした多くの研究が行われてきた。一方で、それ以外の Ras ファミリーに関する研究はとても少ない。また、Rasファミリーの中でも、R-Ras は細胞接着や細胞膜伸展を促進することが知られているものの、その分子機構は不明であった。細胞接着や細胞運動は細胞の最も基本的な機能の1つであり、細胞の増殖や分化そしてガン化を制御する。そこで、我々は、R-Rasの下流のシグナル伝達経路の探索を行った。その結果、R-Rasサブファミリー低分子量G蛋白質のうち、R-Rasのエフェクターとしてアクチン結合蛋白質のAfadin、M-Rasのエフェクターとして、アクチン重合制御蛋白質のLamellipodinを同定した。活性型のR-RasおよびM-RasはAfadinおよびLamellipodinのRas結合ドメインに直接結合し、それらの細胞質膜への膜移行を促進することにより、細胞の形態形成を制御していることが明らかになった。また、M-Rasを介したAfadinの膜移行は、反発性ガイダンス因子のセマフォリンの刺激により抑制されることがわかり、ガイダンス因子下流のシグナルとしてこの、M-Ras-Afadinの経路が動いていることが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初は、R-Rasファミリーの下流分子の探索に時間を要すると予想していたが、おもいのほか、候補分子の解析がスムーズに進み、現在、AfadinおよびLamellipodinの知見に関して、査読誌2報に投稿し、すでに改訂査読中である。
|
今後の研究の推進方策 |
当初の計画通り、来年度以降には、様々なガイダンス因子シグナルの下流において、R-Ras-AfadinのシステムやM-Ras-Lamellipodinのシステムが実際に機能しているかどうかを、培養がん細胞を用いて検討していく。
|
次年度の研究費の使用計画 |
顕微鏡の高倍率レンズを購入し、より詳細な細胞観察を進める。その他の経費はガイダンス因子やR-Rasの抗体や、細胞培養に必要な消耗品費として計画している。
|